リッツさんから聞いた彼の意外な一面…-。
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リッツ『今のは、オレのおばあ様。オレ、実はおばあちゃんっこで』
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はにかみながら語られた言葉と優しげな視線に、彼に感じていた距離が、少しだけ近くなった気がしていた。
その後、私達は中庭に出て、いろいろと話をした。
勝手に彼に感じていた距離感を埋めるように…-。
…
……
リッツ「それで、その時に聞いた話が忘れられなくて、おばあ様の部屋に入り浸るようになった。オレがおばあちゃんっこになったきっかけは、そんなトコ?」
ひととおり話し終えたリッツさんが、懐かしそうに目を細める。
〇〇「どんな話をおばあ様から聞いたんですか?」
リッツ「オレのおじい様……つまり、もう亡くなっちゃった先代の王について。 おばあ様、未だにおじい様に恋してるんだって言ってた。 もう、亡くなってだいぶ経つのに、思い出す度にドキドキしてるって」
大切なことのように話すリッツさんに……
〇〇「可愛らしい人なんですね、おばあ様って」
リッツ「うん、オレもいつか誰か一人と本気で恋に落ちるなら、あんなふうになりたい。 今のところ予定はないんだけど…けど、キミとならいいかな」
〇〇「え……!?」
(冗談……かな?)
聞き返せずにいたけれど、リッツさんはそれ以上何も言わずに、楽しそうに笑っていた。
リッツ「けど……」
不意に、にこやかに話をしていたリッツさんの顔色が曇った。
リッツ「……おばあ様、元気そうに見えるけど、ここのところ体調崩し気味なんだ。 だから医者にも城の外に出るなって言われてて……。 だからオレ、今度のおばあ様の誕生日には何か喜んでもらえそうなことしたいんだけど……」
〇〇「お誕生日、近いんですか?」
リッツ「そ、来週の祝日、けど何するかまだ全然決まらなくて……」
そう言って、唇を曲げるリッツさんに……
〇〇「大勢で、おばあ様をお祝いしたらどうでしょうか」
リッツ「やっぱり、そう思うよね!?」
顔を上げたリッツさんの表情がパッと明るくなった。
〇〇「はい、皆がいた方が元気を出していただけるかなって」
じっとリッツさんが、私を不思議そうに見つめる。
〇〇「……? どうかしましたか?」
リッツ「オレの今までのカノジョ達に話しても、もっと軽い感じだったのに……」
〇〇「え?」
リッツ「おばあ様の話。あんまり、今までのコ達は興味なさそうだったからさ」
リッツさんの満面の笑みが、私に向けられて……
リッツ「なんかオレ、嬉しいっ! ね、やっぱキスしよ?」
〇〇「えっ、だ、ダメですよ!」
リッツ「そっかー、残念! じゃ、唇にはまた今度ね」
すると、リッツさんは、私の額に……
〇〇「……っ」
(今のって……!)
柔らかなものが押しつけられた感覚に、頬が熱くなる……。
慌てて彼から一歩後退って、その顔を見上げる。
リッツさんは自分の唇に人差し指をあてて、いたずらっ子のような笑み浮かべていた…―。