第2話 おばあちゃんっこな彼

リッツさんにトニトルスの城へ招待されて数日後…-。

私は見知らぬ国が珍しく、中庭に出て花を見ていた。

すると……

若い女性1「もー、ほんっとリッツ王子ってば調子いいんだからー!」

若い女性2「でもそういうとこも含めて、憎めないからズルいよね」

リッツ「え、なんで? みんなで遊びに行った方が楽しいじゃん!」

中庭から見える回路に、数人の女の子を引き連れたリッツさんの姿が見えた。

すでにこの城へ訪れてから、何度か同じような光景を目にしている。

(毎回連れている女の子も違うみたいだし……)

軽く息を吐き出すと、リッツさんと目が合った。

リッツ「ねー! キミもこっち混ざりなよーっ!」

〇〇「……っ」

リッツさんは手を大きく振って声を張り上げた。

私は……

〇〇「ごめんなさい、また次の機会にお願いします」

リッツ「そうなの? じゃあその気になったら待ってるから、言ってね」

明るく答えて、投げキッスを飛ばしてくるのに曖昧な笑顔で応えた。

(悪い人じゃなさそうだけど、ちょっと苦手かも……)

そんなことを思いながら、私はその後、中庭で一人の時間を過ごした…-。

……

翌日…-。

泊まっていた部屋から出ると、どこからか楽しげな会話が聞こえてきた。

??「――あら、そうだったのねぇ」

リッツ「ははっ、ビックリだよな、だからオレ、思わず……」

(リッツさんの声……またいつもの女の子達と話しているのかな?)

そっと様子をうかがおうと、柱の影から顔を出してみる。

だけど、リッツさんが話していたのは、老齢の貴婦人だった。

(あ……)

(あのおばあさんと話してるリッツさん、まるで子どもみたいな顔してる)

今までの軽い雰囲気とも違う、柔らかで相手を思いやるような目線……

一体、相手は誰なんだろうと思って思わず柱の影から出てしまうと…-。

リッツ「……っ!」

リッツさんが私の姿に気づいた。

一瞬、目を大きくして、頬を赤くさせる。

しばらくして話が終わり、彼は老齢の貴婦人と別れると、私の元へ近づいてきた。

〇〇「ごめんなさい、立ち聞きしてしまって……今の方は?」

リッツ「……やっぱ見てたんだ、うわ……恥ずかしいな。 今のはオレのおばあ様。オレ、実はおばあちゃんっこで」

(リッツさんのおばあ様……つまりこの国の王太妃様)

リッツ「ははっ、この年にまでなって恥ずかしいよね! けどオレ、おばあ様には小さい頃からかわいがってもらってて……」

そっと私から外れた視線は、先ほどおばあ様が去っていった方に向けられている。

その表情は、やっぱり柔らかくて……

(リッツさんにこんな一面があるなんて、知らなかったな)

〇〇「とても楽しそうでした。リッツさんもおばあ様も」

リッツ「まあね! おばあ様の話聞くのオレ好きだから」

照れたように鼻を擦ってリッツさんが笑う。

その笑顔に、おばあ様に向けられていたのと同じ優しさを感じて、私の胸は温かくなった…-。

 

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