リッツさんにトニトルスの城へ招待されて数日後…-。
私は見知らぬ国が珍しく、中庭に出て花を見ていた。
すると……
若い女性1「もー、ほんっとリッツ王子ってば調子いいんだからー!」
若い女性2「でもそういうとこも含めて、憎めないからズルいよね」
リッツ「え、なんで? みんなで遊びに行った方が楽しいじゃん!」
中庭から見える回路に、数人の女の子を引き連れたリッツさんの姿が見えた。
すでにこの城へ訪れてから、何度か同じような光景を目にしている。
(毎回連れている女の子も違うみたいだし……)
軽く息を吐き出すと、リッツさんと目が合った。
リッツ「ねー! キミもこっち混ざりなよーっ!」
〇〇「……っ」
リッツさんは手を大きく振って声を張り上げた。
私は……
〇〇「ごめんなさい、また次の機会にお願いします」
リッツ「そうなの? じゃあその気になったら待ってるから、言ってね」
明るく答えて、投げキッスを飛ばしてくるのに曖昧な笑顔で応えた。
(悪い人じゃなさそうだけど、ちょっと苦手かも……)
そんなことを思いながら、私はその後、中庭で一人の時間を過ごした…-。
…
……
翌日…-。
泊まっていた部屋から出ると、どこからか楽しげな会話が聞こえてきた。
??「――あら、そうだったのねぇ」
リッツ「ははっ、ビックリだよな、だからオレ、思わず……」
(リッツさんの声……またいつもの女の子達と話しているのかな?)
そっと様子をうかがおうと、柱の影から顔を出してみる。
だけど、リッツさんが話していたのは、老齢の貴婦人だった。
(あ……)
(あのおばあさんと話してるリッツさん、まるで子どもみたいな顔してる)
今までの軽い雰囲気とも違う、柔らかで相手を思いやるような目線……
一体、相手は誰なんだろうと思って思わず柱の影から出てしまうと…-。
リッツ「……っ!」
リッツさんが私の姿に気づいた。
一瞬、目を大きくして、頬を赤くさせる。
しばらくして話が終わり、彼は老齢の貴婦人と別れると、私の元へ近づいてきた。
〇〇「ごめんなさい、立ち聞きしてしまって……今の方は?」
リッツ「……やっぱ見てたんだ、うわ……恥ずかしいな。 今のはオレのおばあ様。オレ、実はおばあちゃんっこで」
(リッツさんのおばあ様……つまりこの国の王太妃様)
リッツ「ははっ、この年にまでなって恥ずかしいよね! けどオレ、おばあ様には小さい頃からかわいがってもらってて……」
そっと私から外れた視線は、先ほどおばあ様が去っていった方に向けられている。
その表情は、やっぱり柔らかくて……
(リッツさんにこんな一面があるなんて、知らなかったな)
〇〇「とても楽しそうでした。リッツさんもおばあ様も」
リッツ「まあね! おばあ様の話聞くのオレ好きだから」
照れたように鼻を擦ってリッツさんが笑う。
その笑顔に、おばあ様に向けられていたのと同じ優しさを感じて、私の胸は温かくなった…-。