精霊の国・セクンダティ トニトルス 影の月…-。
雷の力を司るトニトルス族の地で、新たな王子が深い眠りから目を覚ました。
リッツ「んん~~、よく寝たー……あれ、キミは……」
エメラルド色の寝ぼけ眼が、私を認めた瞬間…-。
リッツ「かっわいいじゃん! ね、オレとキスしよ?」
〇〇「!?」
(えっと……今の聞き間違いかな?)
(キスって聞こえた気がするんだけど……)
あまりのことに呆然として、目覚めたばかりの王子を見る。
リッツ「……?」
(この人が、トニトルス族のリッツ王子……)
肩に届く少し緑がかった明るい金髪。
底抜けの明るさを感じさせる、よく動く丸い瞳……
リッツ「……どうしたの? ビックリさせちゃった!?」
〇〇「は、はい……」
リッツ「あははっ! これくらいで赤くなるなんて、いいじゃん、いいじゃん! その新鮮な反応、ますますカワイイ。 キミ、オレのこと目覚めさせてくれたんだろ?名前は?」
〇〇「〇〇です」
リッツ「へえ、サンキュー、オレはリッツ。ってことで、オレ、キミをトニトルスの城に招待するよ」
二カっと歯を見せて笑顔を見せたかと思えば……
〇〇「……!」
リッツさんは、私の手を掴んで、軽やかに抱き寄せた。
(ち、近い……!)
至近距離まで近づく彼の顔に、男の人の腕の中で感じる、自分より高い体温……
いきなりのことに、再び言葉を失ってしまう。
〇〇「あの……」
リッツ「……いいだろ? 助けてもらって、はい、さよなら……じゃ、ちょっとさみしいじゃん」
なかばリッツさんの軽快なテンポに乗せられるように、私は彼の城へと招待を受けることになったのだった…-。