ギルドの薬と金を盗んだことを疑われ、監禁されたオレと〇〇は…-。
一人の仲間が手を貸してくれたおかげで、何とか脱出することができた。
(でも、このまま放っておけねえ。真犯人を見つけねえと……)
オレと〇〇は、手を貸してくれた仲間と共に管理庫の前で息をひそめている。
仲間の男「あっ、誰か来ました……!」
けれど、そこで見た光景は思いもよらぬものだった。
(ん? あれは……)
オレと同じ服装をした男が、静かに管理庫に近づいていく。
ダヤン「何だあれ。オレのローブを着て……」
仲間の男1「まさかあれが犯人の……」
(オレのふりをしているのか?)
頭が、カッと熱くなる。
(オレに罪をなすりつけるために……)
(絶対に許さねえ……!!)
男がドアノブに手をかけた瞬間、堪え切れず駆け出していた。
ダヤン「お前、何をしているっ!?」
〇〇「ダヤン君、あぶな…-!!」
〇〇の声が響いた気がしたけど、頭に血が上っていたオレは、そのまま男に勢いよくのしかかった。
??「うわあっ!!?」
ダヤン「オレの恰好なんか真似やがって! 顔を見せやがれ!!」
仲間の男「観念しろ」
オレ達は二人がかりでその男を取り押さえる。
男のフードに手をかけ、正体を暴くと…-。
ダヤン「お前は……!」
ギルドの男2「……」
男は、開き直ったようにオレを睨みつけた。
(こいつは……)
―――――
ギルドの男2『いたぞ! ダヤンだ!!』
ギルドの男2『見ない顔だ……疑わしい。この女にも話を聞く必要がありそうだ』
―――――
(オレが犯人だって騒ぎ立てたやつ……)
(なんでこいつが……)
ダヤン「どういうことだ」
ギルドの男2「俺だって……金が欲しかったんだよ!! ダヤンはいいよな! 長の立場を利用して、好きなだけ自分の懐におさめることができるからな!」
その言葉が、オレの胸を矢のように貫いた。
仲間の男「ダヤンはそんなこと…―!!」
じわりと、鈍い痛みが全身に広がっていく。
(ああ……やっぱりそう見えてたのか)
―――――
ギルドの男1『それが……ダヤンを疑っている者が大勢いまして』
―――――
たとえギルドの仲間や薬の開発のためとはいえ、オレが詐欺まがいのことをしてきたことに違いはない。
(ろくにこいつらに説明もしないで、自由に動き回ってきたツケかな……)
(仕方ねえとは思う……けど……っ!!)
ダヤン「……っ!!」
やり場のない思いをぶつけるように、オレは拳を振り上げた。
〇〇「ダヤン君! やめて!!」
その声に、ハッと我に返る。
顔を上げると、〇〇が悲しそうな顔でオレを見つめていた。
(なんで……)
一瞬、頭の中が真っ白になる。
その後すぐに襲ってきたのは、深い失望感だった。
(あんたも、オレを否定するのか)
ダヤン「止める理由、ねえだろ」
(別に、いつも通りじゃねえか)
(誰に何を思われたって、オレが信じるものは金なんだからいいじゃねえか……なのに)
ひどく胸が痛くて、オレはそれ以上言葉を紡ぐことができなかった。
すると…-。
〇〇「殴ってしまったら……きっともっと、辛くなると思うから」
(……!)
彼女を見ると、その瞳は真っ直ぐオレに向けられていた。
(辛くなるって……オレが?)
泣きそうな程に真剣な眼差しが、静かにオレに語りかけてくる。
―――――
ダヤン『オレ、昔、行商の途中で両親を戦火に巻き込まれて亡くしてるんだ。 それからずっと、土地も家も持たず天涯孤独の身で……』
〇〇『そんな悲しいことが……』
―――――
ふと、監禁された小屋の中で〇〇に話したことを思い出した。
(あんたは、オレを見てくれている……?)
あの時、オレの背を撫でてくれていた彼女の手の温かな感触がよみがえる。
彼女はオレの気持ちを知ってか知らずか、小さく頷いた。
(〇〇……)
ダヤン「……本当に、お人好しだな」
怒りと失望に支配されていたオレの心が、次第に晴れていく。
ダヤン「後は頼む」
去り際に、〇〇に視線を送る。
彼女は、まだ不安そうにオレのことを見つめていた。
(どうしてあんたは、そんなに……)
胸の内にある言葉にできない感情に戸惑いながら、オレはその場を後にした…-。
おわり。