ギルドの男4「普段から金に汚いあんたのことだ! 絶対に犯人だろう!?」
ダヤン「何だよお前らっ! オレは何も知らねえよ!」
その時のダヤン君の、ひどく悔しそうな顔と叫びが、頭から離れない……
お金と薬を盗んだとして、私も一緒に監禁されてしまった。
ダヤン「くそっ……何でだよ。金が好きで、何が悪いんだよ」
ひざを抱え、吐き捨てるようにダヤン君が言う。
私はそっと、彼の隣に静かに寄り添った。
〇〇「……どうしてそんなにも、お金に固執しているの?」
ダヤン「そんなのは当たり前だろ! 世の中、金が全てだからだよ」
やや声を荒げたのち、ダヤン君はきつく唇を噛み締めた。
〇〇「ダヤン君……」
ダヤン「ごめん。あんたに怒鳴ったりするつもりはなかったんだけど……。 オレ、昔、行商の途中で戦火に巻き込まれて両親を亡くしてるんだ。 それからずっと、土地も家も持たず天涯孤独の身で……」
〇〇「そんな悲しいことが……」
ダヤン「別に特別オレが不幸な人間ってわけでもない。ただ……。 そんな中で唯一確かなものは、金だった。目に見える価値のあるものは、金だけなんだ」
悲しさを心の内にひた隠すような、その姿に……
思わずダヤン君の丸く縮こまった背を優しく撫でる。
ダヤン「……」
手を跳ねのけられるかと思ったけれど、ダヤン君は何も言わず、ただ顔を伏せていた。
その時…-。
ギルドの男1「ダヤン……」
入り口から控えめな声が届いた。
ダヤン「……お前……」
そこには、鍵を開け手招きをする、一人の男性の姿があった…-。