第2話 笑顔の裏

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ダヤン「あんた、死ぬよ。それ、毒影花。素人がうかつに触ると、痺れて永遠におねんねだから」

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美しい花畑で再会したダヤン君が毒花に触れかけた私を、助けてくれた。

そして今は、せっせとその毒花を手袋に肌を包み、摘んでいる。

ダヤン「毒薬の花って綺麗だろ」

〇〇「え……?」

ダヤン「皆まるで魔術にでもかけられたみたいに、引き寄せられて手を伸ばしちまう。気をつけな。美しいものには絶対に毒がある」

花を摘みながら言い切り、ダヤン君は顔を上げた。

そして、真剣な瞳をきらりと輝かせたかと思えば、ニッと笑う。

ダヤン「綺麗なモンと毒は金になる。あんたも、金になるかな?綺麗だから」

〇〇「え」

ダヤン「ははっ、冗談だよ。あんたって面白いな、単純で」

ダヤン君は、けらけらと軽快な笑い声を立てた。

それから不意に、はっと何か楽しいことでもひらめいたかのように、目を輝かせると…ー。

ダヤン「そうだ!あんた、オレの仕事、手伝わないか!?」

〇〇「仕事……?」

ダヤン君は立ち上がり、強引に私の手をぎゅっと握り締めた。

きらきら光る瞳で覗かれると、思わずどきりとしてしまう。

ダヤン「オレ達は、毒花の薬を材料として集めて調合して売っている。 ここの花は、最近見つかった新しい種類の毒花で……。つまりはまだ、他のやつらは手をつけてないってこと!」

〇〇「ええっと…?」

ダヤン「だーからー、儲け話だろ?コレ」

〇〇「あの……王子様だけど、商売をしているってこと?」

ダヤン「あ?王子?」

とダヤン君の顔に急にかげりが落ちる。

けれどすぐに彼は自嘲気味に、ふんと鼻を鳴らした。

ダヤン「誰かだよ。オレはそんな高尚な血は流れてねえ」

〇〇「でもダヤン君は薬売りのギルド長の一族なんじゃ……」

ダヤン「そんなことより!!」

私の話を遮るように、ダヤン君が声を張り上げた。

ダヤン「どうだ。薬の調合、手伝ってみないか?」

〇〇「ちょ、調合……? でも、どうして私に?」

ダヤン「そりゃ、あんたが素直に手伝ってくれそうだからだろ!」

ダヤン君は、さも当たり前だといった様子でニカッと笑った。

ダヤン「なあ、いいだろ? あんた優しそうだし、人のためになる薬、作ってみたいと思うだろ?」

力説するダヤン君の勢いに、押されそうになってしまう。

〇〇「だけど私、何の知識もないし、お手伝いできるかどうか……」

ダヤン「だーいじょうぶだって!今は、猫の手も借りたい状態。この毒影花の解毒剤は、まだオレのところでしか作れないし……。死人が出る前に、なんとかしたいんだ。さっきだってあんたも触れそうになったし。きっと、またあんたみたいな旅人が通りがかって…」

(ダヤン君……)

〇〇「わかった。私が手伝えるなら……」

切実に語る彼の様子に、私は頷いた。

ダヤン「そうこなきゃな!さすがトロイメアの姫さんだぜ!!」

ダヤン君のその笑顔の裏にある思惑に、私は気付くことができなかった…ー。

 

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