毒薬の国・モルファーン 蒼の月…ー。
モルファーン国王様との謁見を終えた、雨上がりの帰り道のこと…ー。
足早に通り抜けようとした花畑で紫陽花のような小さく可愛らしい花々が雨だれに輝いていた。
(綺麗……可愛い花びらに、雨の露が光って、すごく幻想的)
自然と足を止めて、その光景に魅入ってしまう。
不思議とひどく惹きつ付けられて、導かれるように手を伸ばした時だった。
??「あんた、死ぬよ」
〇〇「っ!?」
突然、手を掴まれ止められて、驚いて振り返る。
すると、そこにいたのは…ー。
〇〇「ダヤン君……!」
ダヤン「それ、毒影花。素人がうかつに触ると、痺れて永遠におねんねだから」
利発そうな瞳をくるんと光らせ、ひょいと肩をすくめる。
ニッと笑うその表情に懐かしさと再会の喜びが沸き上がってきた。
(ダヤン君……薬学長のギルド『メディシナ』の長……)
彼を目覚めさせたのはつい先日のことだった。
ダヤン「わかった?」
驚いて返事ができずにいると、掴まれている手が引っ張られ、ぐっと顔を覗き込まれる。
〇〇「う、うん」
ダヤン「よし、トロイメアの姫が毒花で死んだなんて、笑い話にもならないよ」
ダヤン君の手が、そっと離される。
それから彼は手袋をはめると、慣れた手つきで毒影花を摘み始めた。
〇〇「あの、ダヤン君。ありがとう」
ダヤン「へへっ。これくらい、どうってことない。 それにこれで、オレを目覚めさせてくれた対価にはなっただろ」
(対価……)
その言葉にやや違和感を感じつつ、花を摘む彼の手際の良さに感心していたのだった…ー。