カミロさんが犯人のことを告げに来て、しばらくの後…―。
私はカミロさんに誘われて、大聖堂へと連れていってもらった。
大聖堂の中は荘厳な雰囲気に満ちていて、上品なお香の匂いがほのかに漂っている。
○○「気分が落ち着くところですね」
カミロ「前に案内したときは、中まで入れなかったからな。今日は特別に許可してもらった」
○○「え……?」
カミロ「オマエのために……いや。俺のためだな」
○○「……?」
カミロ「この前、オマエの言葉に救われた」
(あの犯人が前に捕まえた人の弟だったって話のとき……)
カミロ「すっかり仕事に自信を失くしていたときだったんだ」
○○「そんな……」
心配して声をあげると、カミロさんは首をゆっくりと振る。
カミロ「大丈夫だ。今は、もうしっかり責務を果たしている」
○○「……っ」
ほっとすると、カミロさんが表情を綻ばせた。
カミロ「また、そんな顔をするんだな」
○○「えっ、私、変な顔をしてましたか」
カミロ「本気で心配している顔だ」
○○「それは……本気でしたから」
カミロ「俺も本気だ」
○○「……?」
カミロ「俺はこういうことには疎くて……この気持ちをどう伝えていいかわからない……」
不器用に、必死に……カミロさんが私に伝えてくれようとしてるのがわかる。
(気持ちって……?)
カミロ「ミカエラにも相談したが……あいつの提案は俺には似合わない。だから……俺なりに精いっぱい考えて、出した答えがこれだ」
そう言うと、ふわりといい匂いが鼻をかすめた。
目の前に差し出されたのは、カミロさんの翼のように真っ白な花を束ねたブーケで……
カミロ「女性には花を贈ればいい……と聞いた」
風に揺れているのかと思ったけれど、持っているカミロさんの手が震えてるらしい。
(こんなに緊張して……でも私のために一生懸命で……)
花の甘い香りを吸い込みながら、胸がいっぱいになる。
カミロ「気に入らなかったか?」
○○「いいえ、とても嬉しいです。どうお礼を言ったらいいか……」
私はそっと花束を受けると、にっこりと微笑んだ。
カミロ「その笑顔が何よりの礼だ」
はにかんだ顔を見せられ、胸がときめく。
カミロ「白にするか赤にするか迷ったが」
○○「白で良かったです。カミロさんの羽と同じ色だから」
カミロ「触れてみるか」
大きくゆっくりと翼が広がり、私へと伸ばされた。
あんまり綺麗で、その端に触れると、びくっとカミロさんが震える。
○○「柔らかいですね」
花と翼の純白に囲まれて、私は甘く微笑んだ。
カミロ「オマエの方が、よっぽど柔らかだった。庇って触れたときに、そう思ったんだ。女性はこんなにも柔らかなものかと……」
○○「また触れてみますか?」
思いがけず口を出た大胆な言葉に、自分で真っ赤になる。
カミロ「……罪でないなら」
頷く私に、ゆっくりとカミロさんが距離を詰めてくる。
カミロ「この花は、やっぱりオマエに似合うな。いや、○○が花みたいなのか……いい匂いがするし……花びらみたいに柔らかで……」
髪に触れたカミロさんの指先が肩に滑り、そっと腕の辺りを撫でた。
カミロ「手折りたくなる……」
掠れた声で囁かれた頃には、花の甘さとは違う蜜のような空気が私達を包み始めていた…―。
おわり