カミロさんに濡れ衣を着せた少年は捕まり、今は取り調べが進んでいるらしい。
今日はその報告に、カミロさんが私の部屋を訪れていた。
○○「それじゃあ、あの少年は……」
カミロ「ああ、以前に俺が捕縛した男の弟だったらしい」
○○「そうだったんですか……」
カミロ「最初から俺を狙ったんだろう」
そう言った後、少し視線を床に落とし、カミロさんは黙り込む。
カミロ「…………」
(カミロさんは正しいことをしてるだけなのに……それでも恨みを買ってしまう)
そのことを思うと、胸が軋むように傷んだ。
カミロ「うまくはいかないな。これじゃあ、まるで俺のしたことが新しい悪事を呼んだようだ」
自嘲するように苦笑する顔を見て、激しく首を振った。
○○「! そんなことありません……!だって、カミロさんは皆を守るために頑張ったんですから。だから…―」
言い募る私を見て、カミロさんは驚いた顔をした後、ふっと表情を和らげる。
カミロ「どうしてオマエが泣きそうな顔をしてる……」
○○「え……」
(私……そんな顔してたの?)
カミロ「自分で気づかなかったのか?」
○○「私はただ、カミロさんが落ち込んでいるんじゃないかって……」
指摘されたことが恥ずかしくて、頬を両手で包んだ。
指先に触れる目尻が熱い。
○○「ごめんなさい。私、出過ぎたことを……」
うつむいて言うと、カミロさんが一歩近づいた。
それに視線を上げると、真っ直ぐ過ぎるほどの眼差しにぶつかる。
急に、体温があがった感じがした。
カミロ「ありがとう。誰よりもオマエにそう言ってもらえるのが嬉しい」
○○「カミロさん……」
カミロ「正直、気落ちしていたんだ。仕事のやり方を悩んだり……」
(やっぱり、堪えてたんだ)
カミロ「なのに……オマエが言ってくれた言葉で、不思議なくらい肩が軽くなった」
○○「……っ」
嬉しい言葉に、頬にまた熱が集まる。
カミロ「ここに来て良かった。また仕事と向き合えそうだ。では、失礼する」
さっと身を翻して、カミロさんは部屋を出ていく。
ふわっと残り香のように、一枚、真っ白な羽根が落ちてきた。
○○「あ……」
私はその白木蓮の花びらに似た羽根を掴むと、そっと胸に抱き締める。
今去っていった人の温もりを感じるような気がして…―。