俺が晴れて無罪放免となった、その翌日…―。
カミロ「俺は……俺を変えてくれた人に思いを伝えたい。オマエのことを、気づいたら……とても愛しいと思ってた」
○○「……っ」
○○を大聖堂へと呼び出した俺は、今まで胸に秘めていた想いを、真っ直ぐにぶつけた。
そうして少しの間、彼女を見つめた後……
(いきなり、こんなことを願っていいものかはわからないが)
カミロ「その……よければ……口づけしても」
○○「!!」
カミロ「……いいだろうか?」
俺は持てる勇気を総動員して、素直な想いを口にした。
心の中は期待と不安で溢れ、鼓動は今までにないほどの早さで鳴り響いている。
(駄目なら駄目で諦める。もちろん、無理に押し通す気など毛頭ない。だが、オマエの気持ちが俺と同じなら、どうか俺を受け入れてほしい……)
俺は祈るような気持ちで返事を待つ。
すると、○○は頬を染めながら小さく頷いてくれて……
カミロ「……っ」
(信じられない。まさか、こんな……オマエが俺を、受け入れてくれるなんて)
先ほどまで心を支配していた期待と不安は、戸惑いと喜びに変わり、味わったことのない感覚に、身も心も翻弄される。
(だが……いつまでも待たせるわけにはいかない)
俺の脳裏に、恥じらいながらも頷いてくれた○○の姿が過ぎる。
(女性にあそこまでさせたんだ。この先は、男の俺が……!)
勝手も何も、わかったものではない。
けれど俺は、意を決して彼女を真っ直ぐに見据えた。
(……い、いくぞ)
○○の気持ちを確かめるように、ゆっくりと顔を寄せる。
そうして、うるさく鳴り響く鼓動を感じながら、お互いの吐息を感じるほどの距離まで近づいたその時……
(……本当に、俺でいいんだな)
少しでも嫌がる素振りが見られたら止めようと思っていたものの、俺を静かに待ち続ける彼女に、自分が本当に受け入れられているのだと半ば夢心地になる。
そして……
カミロ「この国が口づけを禁じてなくて、良かった……俺は禁を破らない自信がない……」
○○「……っ」
俺は小さくつぶやいた後、そっと彼女に唇を寄せる。
それは、口づけと呼べるかは曖昧なほど淡い重なりだったが…―。
(ついに、○○と……)
生まれて初めての……それも、最愛の人との口づけに、意識せずとも笑みがこぼれてしまう。
カミロ「初めてで……下手だったら、すまない」
○○「だ、大丈夫です」
(そうか、それならよかった……)
張りつめていた緊張の糸がようやく緩み始め、心にわずかばかりの余裕が生まれる。
カミロ「なら……言葉に甘えて」
(我ながら調子に乗り過ぎかもしれないが、もう一度……)
○○「……っ」
大丈夫だと言ってくれた彼女の言葉に調子づいた俺は、再び唇を重ねる。
すると、その時……
(鐘の音……か)
彼女と唇を重ねたまま、どこか遠くに聞こえる鐘の音に耳を澄ませる。
浮遊するような感覚の中で聞こえたそれは、まるで男女が永遠の愛を誓う際に響く、祝福の鐘の音のようで……
カミロ「……○○」
唇を離した俺は、どこか力が抜けた表情を浮かべる彼女を見つめる。
カミロ「この先何があろうとも、俺はオマエを守り続けよう。審判の国・アルビトロの王子、カミロの名において、必ず……」
○○「……はい」
二人きりの大聖堂に、誓いの言葉が静かに響く。
そうして俺達は、互いに微笑み合った後……今もなお鳴り響く鐘の音に包まれながら、再び口づけを交わしたのだった…―。
おわり