カミロさんが囚われている牢屋から出た後、なんとか潔白を証明しようとしたけれど……
彼の部下や城の人達も突然の事態に混乱していて、私の話を聞く所ではなかった…―。
(このままじゃ、カミロさんが……)
ー----
カミロ「見本となるべき俺が規則を破ることはできない。隙があったのは自分の責任だ。俺は裁きを受ける覚悟をしてる」
ー----
力になりたいと、その衝動に突き動かされる。
(どんなに辛いか……)
カミロさんが牢屋で一人の夜を過ごすと思うと、いたたまれない気持ちが込み上げてくる。
その時…―。
○○「え、今の子……」
人ごみの中の通りすがりだったけれど、すぐにそれとわかる。
(あの時……ぶつかってきた子だ!)
確信を持って、私はすぐに追いかけた。
……
○○「待って……!」
私は彼の前まで全力で走っていくと、立ちふさがるようにして声をかける。
少年「なんだよ、あ、あんた、カミロと一緒にいた女だな」
(カミロさんのことを知ってる。やっぱりこの子が……)
思わずきっと睨むけれど、相手は怯む様子もない。
○○「どうして、あんなことしたの?」
少年「何のことだい」
○○「とぼけないで……!」
真っ直ぐに見据えると、少年は居直るように手を頭の後ろに組んだ。
少年「あいつが俺の兄さんを捕まえたからだ。そういえば兄さんの裁判のときに、あんたもいたな」
(じゃあ、兄さんって、あのとき逃げた人……?)
少年「俺は復讐してやっただけだ。とやかく言われる筋合いはねえよ」
そう言うと、私に肩をぶつけながら、通り過ぎようとした。
○○「待って。カミロさんが悪いと思ってるなら、裁判に来てくれないかな?行けば、彼がどんな人かわかるから」
少年「あんた馬鹿なのか?誰がわざわざ捕まりに行くってんだ」
○○「カミロさんは、あなたのことを言ってない」
少年「え…―」
○○「自分の落ち度だって言ってる……でも……そんなのは、間違ってる……お願い!」
必死に頭を下げてお願いを続けると、彼はしぶしぶ頷いてくれた。
少年「……約束しろ」
○○「え?」
少年「俺のことを突き出さないって」
○○「……」
(今、何を言ってもきっとダメだ。でもカミロさんのことを知れば……何か変わるかもしれない)
そんな望みをかけて、私は小さく頷いた…―。
数日後……
カミロさんの裁判が開かれる日となって、私は例の少年と一緒に傍聴席に座る。
裁判官「それでは被告カミロの裁判を始めます」
開始を告げる木槌が鳴らされ、裁判官が入廷してきた。
(カミロさん……少しやつれたかも……)
その姿を見て、ぎゅっと手のひらを強く握り締める。
……
しばらくのやりとりの後……
裁判官「最後に言いたいことがあれば述べてください」
カミロ「俺の罪は油断したことだ。そのためにこうして捕縛され、国の秩序を守る勤めができない。そのことを、今、とても悔いている」
カミロさんは濡れ衣を着せられているという素振りを見せず、誰を恨む様子も無く堂々と立っていた。
(こんなに責任を感じて……人を責めもしないで)
少年「あいつ……オレを責めないんだな」
○○「そうだよ。だってこの街を守ることが勤めで、あなたを糾弾することが勤めじゃないから」
少年「なんでだよ……どうしてそんなことができるんだ?意味わかんねえ」
○○「カミロさんはこの国と人の平和を心から願っていて……自分に厳しくて、他人に優しい人なんだよ。だから誰のせいにもしないし、恨んだりすることもないんじゃないかな」
少年「……」
不意に、彼が椅子から腰を上げた。
○○「どこに…―」
少年「心配しなくても、逃げねえよ」
そう言うと、少年は裁判官の前へ歩み出ていった。
カミロ「お前は……!」
少年「悪かったよ」
人々のざわめきが、大きさを増していく。
(良かった。これできっとカミロさんは釈放されるはず……)
その時、少年と何かを話していたカミロさんが、私の方を見た…―。