第4話 違う一面

裁判の傍聴見学をした次の日…―。

迎えに来てくれたカミロさんに案内され、今日は警察組織の施設を見学させてもらっている。

○○「立派な礼拝堂が多いんですね」

今、荘厳な鐘を奏で始めた鐘楼を見上げて言った。

カミロ「罪人には少しでも自分の罪と向き合って、悔い改めてもらいたいからな」

○○「こんな荘厳な礼拝堂を見たら、すぐに懺悔に行きたくなりますね」

そう言うとカミロさんは、いきなり両の二の腕を掴むと、大真面目に顔を覗き込んでくる。

カミロ「まさか……何か罪を犯したのか?」

○○「い、いいえ……例えばの話です」

カミロ「そ、そうか……」

ほっとした後、私の腕を掴んでいることに気付いて、ぱっと手を離した。

カミロ「すまない。つい焦って」

カミロさんが気まずそうに視線をそらす。

○○「私こそ……誤解させてすみません」

カミロ「よく考えれば、○○のような清らかな女性が罪を犯すはずがなかった」

清らかなどと言われて、私は顔を赤くする。

○○「そうでしょうか……」

カミロ「ああ……オマエは大丈夫だ」

じっと見つめられて、とくんと心臓が鳴った。

その時、通りすがる人がカミロさんに声をかけた。

カミロ「彼は部下の一人だ」

囁かれ、私は一礼をする。

そのまま会釈をして通り過ぎると思っていたけれど、カミロさんは部下の人に近づいていき……

(カミロさん?)

カミロさんは部下の人の目の前に立つと、服装に手をつけた。

カミロ「……裾が乱れていた」

どうやら、服装を正してあげていたらしい。

(面倒見がいい部分もあるんだ)

突然近づいてきたカミロさんに戸惑っていた部下の人も、裾を直してもらいほっとした様子だった。

部下「ありがとうございます、カミロ様!」

笑顔でお礼を告げると、明るくカミロさんに話しかける。

部下「カミロ様、綺麗な人と一緒ですね。彼女さんですか?いいなあ。うらやましいです」

○○「あ……あの」

からかう口調に顔が熱くなって、思わず両手で頬を覆う。

カミロ「おいっ」

カミロさんは咎めるような厳しい声で、部下の人に怖い顔を向けた。

カミロ「彼女は私の恩人だ。失礼なことを言うな」

カミロさんがじろりと部下の人を睨むと……

部下「す、すみません。どうぞごゆっくり」

それだけ言って、一瞬のうちにいなくなってしまった。

カミロ「すまない。部下の教育不行き届きだった」

○○「気にしてませんから」

カミロ「俺が気になるんだ。もっとこの国のいいところを見て欲しいんだが、うまくいかない。オマエには、少しも不愉快な記憶を残してもらいたくない」

真剣な口調と生真面目な瞳が私を射ぬく。

その眼差しに打ち抜かれたように、心臓がドキドキと音を立てていた…―。

 

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