〇〇と、ソリテュードの城へと戻ってきた後……
宰相アルマン「ご帰還……配下共々、お待ち申し上げておりました! 王子に決めていただきたいことが山積みなのです。しばらくはお忙しくなりますよ?」
(そう……なのか?)
ちらりと〇〇を見ると、彼女は僕の問いに肯定するように頷いてくれた。
(そうか……そうなのだな!)
ソルベージュ「そうかそうか、やはり神に愛されしこの僕の力が必要なのだな!」
宰相アルマン「はい! もちろんでございます。 細かな仕事は私の方で片づけておきましたので、王子には王子にしかできないお仕事を是非」
僕の留守中に溜まったのか、書類が目の前に山のように積まれる。
(僕がいなければ、こんなに書類が溜まるものなのか……)
(それに、アルマンも僕が戻ってきて嬉しそうだ)
(やはり僕には……)
ソルベージュ「どうやら僕にはやはり王子としての椅子がお似合いのようだね」
〇〇「そうですよ、ソルベージュさん」
〇〇も、僕こそが王子にふさわしいと応援してくれている。
(〇〇……君と出逢えて、僕は自分の価値を思い出すことができたんだ)
(君は最初から僕のことを理解してくれて……それで城に戻るよう勧めてくれたんだね)
(ああ……君は僕を見ていてくれた……)
〇〇への気持ちが膨れ上がる。
ソルベージュ「よし、そうと決まれば、まずは君の歓迎会を取り仕切らなければ!」
〇〇「えっ! でもこの山になった書類はいいんですか?」
ソルベージュ「この僕が本気を出せば、こんなもの造作もないさ! 一昼夜のもとに、こうなんとか上手い具合にしてみせよう……多分」
心配そうに僕を見つめる〇〇に、ウインクを飛ばしてみせる。
(問題ないよ、〇〇。 だって僕は……)
(神に愛された籠児なのだから)
僕はアルマンに歓迎会の手配を頼み、部屋へと戻ったのだった。
…
……
ソルベージュ「……」
僕はおびただしい数の書類と向き合っていた。
ソルベージュ「なるほどな。僕にしかできないこと……というわけだ。 ええと、アマレナとの共同開発商品にふさわしいモチーフの検討……。 ……駄目だ、疲れた」
バサリと、、本日一枚目の書類をデスクの上に投げ出し、僕はソファに横になる。
その時…-。
??「ソルベージュ様」
ノックの音と共に、顔を覗かせたのはアルマンだった。
宰相アルマン「〇〇様の歓迎会の準備が整いました」
ソルベージュ「え? もう?」
思わず問いかけると、アルマンは少し慌てた様子で言葉をつけ足した。
宰相アルマン「は……王子が戻られましたので、私の仕事も減りまして、それで……」
ソルベージュ「ふうん……まあ、いい。 それよりアルマン」
宰相アルマン「はい」
コホンとひとつ咳払いをし、僕は彼にあることを問いかけた。
ソルベージュ「〇〇だが……どう思う?」
宰相アルマン「〇〇様ですか? お美しく、お優しい方で……」
ソルベージュ「そんなことはわかりきっている……未来のソリテュード王妃に、ふさわしいと僕は思うのだが」
宰相アルマン「!!」
ソルベージュ「……どうだろうか?」
ちらりと、うかがうようにアルマンを見やると……
宰相アルマン「確かに、王子をこうして気にかけ、城にまで連れて帰ってくれるなんて……」
ソルベージュ「そうだろう!?」
勢い良く机に手をつき、僕は高らかに宣言してみせる。
ソルベージュ「今日、歓迎会を終えた暁には……僕は〇〇にその話をしようと思う!」
宰相アルマン「ソ、ソルベージュ様……しかし、さすがにまだ…―」
戸惑いを見せるアルマンだったけれど、僕は構わず言葉を続けた。
(いつもなら、ここで引くところだけど……)
ソルベージュ「いいやアルマン! 僕は彼女に伝えたいんだ。 溢れる想いと、感謝の気持ちを……!!」
(僕を信じ導いてくれた〇〇……)
(君が僕こそが、王子にふさわしいと言ってくれるなら……)
(その婚約者としてふさわしいのもまた、君しかいないんだ!)
天から光が差し込む心地を覚える。
はやる気持ちを胸に、僕は会場へと歩き出したのだった…-。
おわり。