ソルベージュさんの帰還から数日後…―。
彼が取り仕切ったパーティは、それは盛大に行われることになった。
(それにしてもすごい人の数……)
優雅な宮廷音楽が流れる会場には、氷菓の国の諸島中から、様々な来賓が集っている。
さる国の大臣「これはこれはソルベージュ様、ご無事で何よりです!」
ソルベージュ「ははは、僕としたことが国の者達に迷惑をかけてしまったよ」
先ほどからソルベージュさんの周りには、彼の無事を祝おうと、人々がひっきりなしに訪れている。
(よかった……ソルベージュさん、すっかり自信を取り戻してくれたみたい)
誇らしげな姿は、アイス屋を作ると言っていた時よりも、ずっと素敵だ。
そんな彼の姿を見つめていた時だった。
ソルベージュ「○○!こっちへ来てくれるかい?」
○○「私ですか?」
彼に呼ばれて、人々の前に出れば……
○○「……っ!」
ソルベージュさんは、皆さんの前で私の腰を抱き寄せた。
ソルベージュ「彼女はトロイメアの○○、僕の命の恩人さ!」
来賓客「おお、あのトロイメアの!さすが王子、なんと交友が深い」
○○「なっ、ソルベージュさん!?」
ソルベージュ「ふふ、偽りじゃあないだろう?」
得意げに人差し指を目の前に差しだし、彼が微笑む。
その笑顔はキラキラと輝いていて……私は、何も言えなくなってしまったのだった…―。
こうしてパーティーが盛況の内に終わると…―。
ソルベージュさんは、誰もいなくなった会場の椅子に腰をかけて、どこか気の抜けた顔で、お酒のグラスを傾けていた。
(……疲れちゃったのかな?)
○○「ソルベージュさん、大丈夫ですか?」
ソルベージュ「ああ、○○、ちょっとこっちに来てくれるかい?」
○○「はい、なんでしょう?」
彼は私を手招きすると、自分の両膝の間を指差した。
ソルベージュ「はい、ここに座って?」
○○「え!?そこにですか?」
彼は当然とばかりにうなずいて、笑みを絶やさない顔で私を見上げる。
(と、言われても……)
恥ずかしい気分になりながら、戸惑っていると……
○○「……っ!!」
腕を引かれ、強引に彼の膝の間に座らされた…―。
ソルベージュ「僕は……君のお陰で、こうして王子として再びここへ戻ってくることができたんだよ」
嬉しそうな笑みを浮かべて、ソルベージュさんは私に優しく語りかける。
○○「そんな、私は何も……」
ソルベージュ「謙遜することなんてないのさ。それに、やはり僕は、王子でいることが一番似合っている!!」
高らかな声で宣伝したかと思うと、彼は私の頭を、慈しむように撫で始めた。
ソルベージュ「……そうだろう?○○」
○○「ソルベージュさん……」
優しく頭が撫でられて、それがなんだか胸をくすぐったくさせて……
○○「……はい、私もそう思います」
消え入りそうな小さな声で、私は彼にそう伝えた。
ソルベージュ「そうだろう、そうだろう!そうとなれば……立派な王子たる僕の隣に必要なものは、あとひとつだけなワケだけど……」
○○「え……」
そこまで言うと、ソルベージュさんは私の顔を覗き込んだ。
私を真っ直ぐに見つめる、彼の瞳の中で、私の姿が揺れている。
ソルベージュ「ふふ……僕らの今後、考えておいてくれるかな?」
そう紡いだ彼の声が、胸にうるさいくらいに響いてしまって……私は、頬へ一気に熱が上がるのを感じたのだった…―。
おわり。