ソルベージュ「決めた。手始めに、ここに幻の果実と言われるソリテュードベリーの群生地が書かれた地図がある。これを探して、世界一のアイス屋を開業しようじゃないか!」
私はソルベージュさんと一緒に、やや強引にソリテュードベリーを求める旅に出ることになったのだけど…―。
地図を頼りにやって来たのは、意外にも街外れにある森林だった。
○○「あの、伝説の果実がこんな近くに?」
ソルベージュ「少なくとも地図にはそう記されているね」
○○「その地図はどこで?」
ソルベージュ「さあ……?忘れてしまったよ」
何を聞いてもソルベージュさんは明るげに答える。
○○「そもそもソリテュードベリーって、どんな果実なんですか?私は聞いたことがないのですが……」
ソルベージュ「うん、僕も知らない」
○○「えっ、知らないで探しに出たんですか?」
彼のあまりに大雑把な様に、開いた口が塞がらない。
けれど、ソルベージュさんは胸を張って私に笑顔を見せる。
ソルベージュ「大丈夫だよ、レディー、僕は神に愛されているからね。この僕が近づけば、幻の果実の方から、きっと名乗り出てくるさ!」
しっかりウインクを決めると、彼は繁みの奥へ足を踏み出す。
(何て自信なんだろう……)
しかし、どれだけ歩き回っても、幻の果実は一向に見つかる気配がなかった。
○○「ソルベージュさん……もうお城に戻りませんか?」
ソルベージュ「なぜそんなことを言うんだい?」
不思議そうに振り向いた彼が、はっと何かに気づいたような顔をする。
ソルベージュ「すまない、僕としたことが、レディーを歩かせ過ぎてしまうとは!……そろそろお弁当の時間だったのだね、お腹が減ったのならそう言ってくれればよかったのに」
すっきりとした笑みで、彼は近くにあった切り株へと移動すると、胸の内ポケットから取り出したハンカチを敷いて私に座るよう促した。
ソルベージュ「さあどうぞ、レディー」
○○「あ……ありがとうございます」
ソルベージュ「なんのこれくらい、君の可愛いらしいスカートが汚れてしまっては忍びないからね」
(ちゃんと王子様らしいところもあるんだ……)
彼の意外な一面を知って、私は素直に感心した。
すると…―。
ソルベージュ「僕も、隣に座っても?」
○○「はい、どうぞ」
切り株の端に少し身を寄せて、彼が座る場所をつくる。
ソルベージュ「ありがとう、君は本当に優しいレディーだ」
前髪を指に巻きつけながら、彼は優雅に私の隣に腰かけた。
ソルベージュ「こんなこともあろうかと、さっき出かけに買ってきたんだ」
そう言うと、私の隣に腰かけたソルベージュさんは、手にしていたカゴから、美味しそうなバケットサンドを取り出した。
(ソルベージュさんって……)
大雑把な性格の中に垣間見える、細やかな優しさがなんだかくすぐったくて……私の頬は、自然に緩んでいたのだった…―。