第1話 自称・神に愛された王子

氷菓の国・ソリテュード 虹の月…―。

氷の大地の上で、指輪がまばゆい光を放つ。

○○「……っ!」

あまりのまぶしさに目を瞑ると……

ソルベージュ「ん、この清々しい光…僕は目覚めたのか?」

その王子様は目覚めたばかりとは思えないほど、素早く優雅な動きでその場から立ち上がった。

ソルベージュ「ああ、さすが神に愛されし存在、ピンチに陥っても救いの手が差し伸べられるとは……」

○○「あの、大丈夫ですか……?」

ソルベージュ「君は……」

前髪を掻きあげながら私を見つめる彼に、自分のことを説明した。

ソルベージュ「成程……それはお手間をかけてしまったようだね」

コホンと咳払いをして、彼は両手を広げてみせる。

ソルベージュ「僕はソルベージュ、神と時代に愛されし寵児さ!」

(寵……児……?)

○○「あ、はい、ソルベージュさん……」

彼のペースに圧倒されて、私は相槌を打つことしかできない。

すると彼は、唇に余裕のある笑みを浮かべて私の手を取った。

ソルベージュ「メルシー、美しき姫君よ」

○○「……っ!」

(今、唇が手の甲に……)

いきなりのことに、心臓が一気に騒ぎ出す……

しかし彼はそんな私をよそに、満面の笑みを見せてくれる。

かと思うと…―。

ソルベージュ「そうだった!僕は思索の旅に出ようかと思っていたのだった」

目を見開いて、彼はいきなり天を仰いだ。

ソルベージュ「失礼、○○、もう行かなければ……」

○○「あ、体の方は大丈夫ですか?」

ソルベージュ「うん、もうすっかり大丈夫だよ、君のおかげでね」

陶磁器のようにひんやりとした両手が、私の手を握りしめる。

ソルベージュ「……じゃ、また日を改めてお礼をするよ、チャオ!」

彼は一瞬片目を軽く瞑ってみせると、楽しげな足取りで去っていく。

私はただ呆然として、去っていく背中を見つめていた。

(……元気そうで良かった)

この出会いが……

私と氷菓の国の王子、ソルベージュさんとの物語の始まりだった…―。

 

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