〇〇と共に、朝までサンタクロースを待った後…-。
彼女は何故か、私へとプレゼントを差し出した。
しかし……
キャピタ「……? サンタクロースが全部配るのではないのか? 代役を認めてしまっては、サンタクロースがいる意味がないだろう」
(そんなもの……到底納得できない)
サンタクロースの代役としてプレゼントを差し出す彼女を、じっと見つめる。
すると……
〇〇「その……サンタの代役と聞いて、キャピタさんが納得できない気持ちはわかります。 だけど、代役の人達は皆、相手のことを想いながら一生懸命プレゼントを選んで……。 誰かが誰かを想う気持ちも、プレゼントと一緒に渡されているんです。 そのことを……私はすごく素敵だと思うんです」
キャピタ「素敵……誰かが、誰かを……?」
〇〇が口にした言葉の一つ一つを、ゆっくりと噛みしめる。
(……随分と抽象的な意見だな)
(これまでの私であれば、到底理解などできなかったはずだ)
(しかし、今は……)
キャピタ「……なるほど。おぼろげにだが、わかる気がする」
〇〇「え……?」
私がプレゼントを受け取ると、彼女の瞳が意外そうに瞬いた。
キャピタ「最初こそ不可解だったが、誰かが誰かを想う気持ち……。 貴方がそうやってこのプレゼントを選んでくれていたとしたら。 私はそれを嬉しいと感じる」
〇〇「キャピタさん……」
私の言葉に、どこか緊張していた彼女の表情が嬉しそうなものへと変わる。
キャピタ「ありがとう、〇〇。開けてもいいだろうか?」
彼女が頷いた後、私はそっと赤いリボンを解く。
そうして緑色の包みを開けると、そこには小さなスノードームがあった。
(これが、〇〇が私のために……)
(私のことを想って選んでくれたもの……か)
胸の奥から、言いようのない喜びと愛おしさが満ち溢れてくる。
(このような感慨はいつぶりだろう……クリスマスとは不思議なものだ)
そんなことを考えながら、彼女と共にスノードームを見つめていると…-。
キャピタ「ああ……そうだ」
(貴方にもプレゼントを贈らなければ)
(きっと、あの本なら喜んでもらえるはずだ)
部屋の隅へと向かった私は、記憶の糸を手繰り寄せながら一冊の本を探す。
すると、しばらくの後……
(ここにあったか)
キャピタ「〇〇、こっちへ」
私は彼女をソファーの横へと呼び寄せた後、美しい金の刺繍が施された本を差し出した。
キャピタ「受け取ってくれるか?」
〇〇「え……?」
キャピタ「貴方の喜ぶ顔が見たいのだが……喜んでもらえるだろか?」
〇〇「私がもらって……いいんですか?」
(当然だ。貴方以外に譲る気は毛頭ない)
(何故なら……)
キャピタ「私が貴方のサンタクロースの代役になりたい。 私の大事な本なんだ。だから貴方に受け取ってほしい」
〇〇「あ……」
キャピタ「贈る相手を想いながら……そうやって選んだつもりだ」
〇〇は最初こそ遠慮がちに戸惑っていたものの、私の想いが伝わったのか、そっと本を受け取ってくれた。
〇〇「ありがとうございます。あの、中を見てもいいですか?」
キャピタ「もちろんだ」
彼女の細い指先が、ゆっくりとページをめくる。
すると……
〇〇「綺麗……」
〇〇は本に載った写真を見て、ため息をついた。
キャピタ「気に入ってもらえたか?」
〇〇「はい……こんなに素敵なものを、本当にありがとうございます」
(そうか……)
(不思議なものだな。プレゼントをもらった時、私は嬉しいと感じていたが)
(贈る時も、このような幸せな気持ちになるものなのか)
嬉しそうに笑う彼女を見て、この上ない幸福感に包まれる。
キャピタ「喜んでもらえて嬉しい。よかったら、少し一緒に見ないか?」
〇〇「はい……!」
私は〇〇に体を寄せた後、本を覗き込む。
〇〇「この風景、とても素敵ですね」
キャピタ「ああ。これは、海賊の国・アンキュラの写真だ。 確か、どこかに解説があったと思うが……。 この辺りは、世界で一番美しい海と称されているそうだ」
〇〇「そうなんですね。確かに、すごく綺麗で……。 ……っ!」
顔を上げた彼女の頬が、赤く染まっていく。
(〇〇……?)
キャピタ「……どうかしたか?」
〇〇「……」
お互い視線を外せないまま見つめ合っていると、私達の距離は、不思議な力に引き寄せられるように少しずつ近づいていった。
そして……
キャピタ「〇〇……」
〇〇「……」
彼女のまつ毛がそっと伏せられた後、私も同じように瞳を閉じる。
すると次の瞬間、私の唇に甘く柔らかな感触が訪れ……
寒さ厳しい冬のフォルストで、私達は優しく温かな時間を過ごしたのだった…-。
おわり。