キャピタさんと大量の靴下を買い集めた翌日…ー。
私達は、フォルストのいたるところに靴下を吊り下げていった。
キャピタ「これで準備はいいだろう」
相変わらず物で溢れたキャピタさんの部屋に二人で戻ると、早速彼は自分用の靴下を吊るし終えて、煙管をくゆらせる。
○○「来るといいですね」
キャピタ「朝まで、まんじりともせずに待てば、あるいは……」
はやる気持ちを落ち着かせるようにキャピタさんは机の上の天球儀にそっと手を乗せる。
○○「……はい」
(現実的に、サンタクロースが来ることは難しいよね……)
そう思いながらも、靴下を見つめるキャピタさんに告げることはできなかった。
キャピタ「貴方はもう休むといい。今日は随分付き合わせてしまった」
○○「いえ……私も一緒に」
キャピタ「……ならば」
キャピタさんは部屋にある暖炉に火を点け、私に手招きした。
キャピタ「この時期のフォルストの夜はとても冷える。貴方が風邪を引いてはいけない」
○○「……」
そっと暖炉に歩み寄り、傍にあった椅子に腰掛けると、キャピタさんが私の膝にふわりとブランケットをかけてくれた。
(この匂いは……キャピタさんの煙草の……)
薪が暖炉の中で爆ぜ、パチパチと暖かな音を立てる。
○○「……ありがとうございます」
返事をする代わりにキャピタさんは小さく笑みを浮かべる。
(どうか……奇跡が起こりますように)
『不思議の国』という響きに、私はそう願わずにはいられなかった…ー。
…
……
キャピタ「……」
○○「朝……ですね」
窓の外を、二人で見つめる。
結局、夜通し起きていた私達の元に、サンタクロースが現れることはなかった…ー。