第1話 クリスマスとは?

不思議の国・ワンダーメア 星の月…―。

旅の話を聞かせてほしいというキャピタさんに招待され、再びこの国を訪れた私は、彼の住むフォルスト城へと向かうため、昼でも暗く迷いやすいと言われる森の中を歩いていた。

(やっぱりいつ来ても、不思議な雰囲気)

不思議の国・ワンダーメア……

この国は、突然現れた『アリス』という少女を取り巻いて形成されたそうだ。

(朝夜が逆転したり、森が動いたり……トランプの兵隊、それに終わらないお茶会)

昔のワンダーメアは、あの童話の『不思議の国のアリス』にそっくりな国だったと言う。

(けど、アリスがいなくなってワンダーメアは急激な変化を遂げたって……)

(確か、ほとんどの領が近代化しちゃったんだっけ)

以前キャピタさんから聞いた、ワンダーメアについての記憶を辿る。

(でも、ここはずっと昔の面影を残したままだって、キャピタさんは言ってた)

深く生い茂る木々を見渡しながら、私はさらに歩き続けた。

(道、間違ってないよね……?)

冬の冷たい空気の中、次第に濃くなる霧に不安を覚え始める。

そうして私が辺りを注意深く見回した、その時だった。

○○「あれは……?」

霧の中にぼんやりと浮かぶ灯りを見つけ、ぽつぽつと続くそれを辿るように歩く。

すると……

キャピタ「灯りを辿ってこれたと見える」

○○「あ……キャピタさん!」

霧の中からランタンを持ったキャピタさんが現れ、私は安堵のため息をついた。

○○「もしかして、この灯りはキャピタさんが?」

キャピタ「貴方が迷わないようにつけておいた」

○○「そうだったんですね、ありがとうございます」

私はそう言って、後ろを振り返る。

そこには、幻想的な光がいくつも揺らめいていて……

○○「何だか、クリスマスのイルミネーションみたいで素敵です」

キャピタ「ん? クリスマスとは……?」

今まで、どこか憂いを帯びた表情だったキャピタさんが、モノクルに指をかけて興味深そうに聞いてくる。

(キャピタさんでも知らないんだ)

(もしかして、この国にはない風習なのかな)

○○「皆でツリーを飾ったり、街中もイルミネーション……こんなふうに綺麗な灯りで彩られて。 サンタクロースからプレゼントをもらったりする、お祭りのようなものなんですけど……」

私は元の世界のことを思い出しながら、簡単に説明をした。

すると次の瞬間、彼は驚いたような表情を浮かべ…―。

キャピタ「プレゼントをもらう? そんな慈善活動をする者が現れる祭りがあるのか……?」

○○「えっ? は、はい」

(慈善活動とは、ちょっと違うと思うけど……)

キャピタ「……興味深いな。 すまないが、もっとそのサンタクロースについて聞かせてくれないか?」

○○「わかりました」

彼の思慮深い瞳に見つめられ、静かに頷く

こうして私は、フォルスト城への道すがら、キャピタさんにサンタクロースの説明をすることになったのだった…―。

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