不思議の国・ワンダーメア 星の月…―。
旅の話を聞かせてほしいというキャピタさんに招待され、再びこの国を訪れた私は、彼の住むフォルスト城へと向かうため、昼でも暗く迷いやすいと言われる森の中を歩いていた。
(やっぱりいつ来ても、不思議な雰囲気)
不思議の国・ワンダーメア……
この国は、突然現れた『アリス』という少女を取り巻いて形成されたそうだ。
(朝夜が逆転したり、森が動いたり……トランプの兵隊、それに終わらないお茶会)
昔のワンダーメアは、あの童話の『不思議の国のアリス』にそっくりな国だったと言う。
(けど、アリスがいなくなってワンダーメアは急激な変化を遂げたって……)
(確か、ほとんどの領が近代化しちゃったんだっけ)
以前キャピタさんから聞いた、ワンダーメアについての記憶を辿る。
(でも、ここはずっと昔の面影を残したままだって、キャピタさんは言ってた)
深く生い茂る木々を見渡しながら、私はさらに歩き続けた。
(道、間違ってないよね……?)
冬の冷たい空気の中、次第に濃くなる霧に不安を覚え始める。
そうして私が辺りを注意深く見回した、その時だった。
○○「あれは……?」
霧の中にぼんやりと浮かぶ灯りを見つけ、ぽつぽつと続くそれを辿るように歩く。
すると……
キャピタ「灯りを辿ってこれたと見える」
○○「あ……キャピタさん!」
霧の中からランタンを持ったキャピタさんが現れ、私は安堵のため息をついた。
○○「もしかして、この灯りはキャピタさんが?」
キャピタ「貴方が迷わないようにつけておいた」
○○「そうだったんですね、ありがとうございます」
私はそう言って、後ろを振り返る。
そこには、幻想的な光がいくつも揺らめいていて……
○○「何だか、クリスマスのイルミネーションみたいで素敵です」
キャピタ「ん? クリスマスとは……?」
今まで、どこか憂いを帯びた表情だったキャピタさんが、モノクルに指をかけて興味深そうに聞いてくる。
(キャピタさんでも知らないんだ)
(もしかして、この国にはない風習なのかな)
○○「皆でツリーを飾ったり、街中もイルミネーション……こんなふうに綺麗な灯りで彩られて。 サンタクロースからプレゼントをもらったりする、お祭りのようなものなんですけど……」
私は元の世界のことを思い出しながら、簡単に説明をした。
すると次の瞬間、彼は驚いたような表情を浮かべ…―。
キャピタ「プレゼントをもらう? そんな慈善活動をする者が現れる祭りがあるのか……?」
○○「えっ? は、はい」
(慈善活動とは、ちょっと違うと思うけど……)
キャピタ「……興味深いな。 すまないが、もっとそのサンタクロースについて聞かせてくれないか?」
○○「わかりました」
彼の思慮深い瞳に見つめられ、静かに頷く
こうして私は、フォルスト城への道すがら、キャピタさんにサンタクロースの説明をすることになったのだった…―。