ジェリーがトレーニングを開始して、数日が経った頃…―。
彼の事務所を兼ねた城に、マネージャーさんがある一報を持って駆け込んできた。
マネージャー「大変ですよ、ジェリー!」
ジェラルド「どうしたんですか?あなたが慌てるなんて珍しいですね」
マネージャー「そりゃこんなオファーを貰えば誰だって慌てますよ! ジェリーに、新しいラブロマンス大作の出演依頼が来たんです! これはすごいですよ!監督はなんとあのテル・ビートンですから!」
ジェラルド「!!」
○○「テル・ビートン……?」
マネージャー「はい!ビオスコープにも加盟している、一族が代々映画監督を務めている国・ケナルの王族です。 テルはいろんなジャンルを撮りますが・・・・・・弟のウィルはホラー専門です」
○○「そんな国があるんですね……」
マネージャー「その中でも、テルの撮るラブロマンスは最近ハズレ無しですからね!今回は是非ジェリーでと!」
そこで、マネージャーさんの視線が私に向けられる。
○○「……?あ、私……席を外しましょうか?」
マネージャー「いえ、○○様にも聞いていただかなければなりません。 あなた様にも関わってくるお話しですので」
ジェラルド「どうして、○○が? もったいぶらないで、早く聞かせてください」
マネージャー「はい、それが……」
マネージャーさんは一度息を整えると、しっかりとした口調で話し始めた。
マネージャー「最近ジェリーが、どうやら一人の女性と親しくしていると聞きつけた制作会社が……。 そのお相手が、○○様……つまりトロイメアの姫君だと知り、新作映画に是非お二人で出演して欲しいと……!」
○○「え……?私が、ジェリーと!?」
ジェラルド「それは特別出演としてじゃなく、僕の相手役としてなんですか?」
マネージャー「はい、その通りです。 テルは、面白いことが好きな人ですから……でも大丈夫です! 今回はヒロインの台詞も少ないですし、役イメージも○○様に合わせると」
○○「だ、大丈夫って……待ってください!」
二人の視線が、私に集まる。
○○「私、演技の経験なんて……」
困惑に、視線を辺りに彷徨わせる……
マネージャー「どういたしましょうか、ジェリー」
ジェラルド「……僕は……」
心配そうに、ジェリーの瞳が私をうかがう。
○○「……」
あまりの急な話に、私がその視線に答えられずにいると…―。
ジェラルド「僕は……もし○○が相手役なのなら、引き受けたいと思います」
○○「……!」
まさかの言葉に、私は目を見開く。
○○「ならアクション映画や別の路線も挑戦したいという夢は……」
ジェラルド「夢は夢としてもちろん追いかけたいです。だけど……。 もしあなたが恋愛映画のヒロインを務めるのなら、その相手役は僕じゃないと、嫌なんです」
○○「え……」
そう言い切ったジェリーの瞳は、真っ直ぐに私を捕えていた…―。