そして数日後……
ジェリーが受けたオーディションの合否通知が出る日が来た。
その結果は…-。
ジェラルド「やりました! 〇〇!!」
〇〇「……っ!!」
待ち合わせ場所に走って現れたジェリーは、手に合格通知を持っていた。
〇〇「おめでとうございます!」
ジェラルド「製作が押しているみたいで、すぐに衣装合わせがしたいからって、この後、スタイリストさん達と打ち合わせなんです。 よかったら〇〇にも来て欲しいんですが……」
〇〇「え、私が? いいんですか?」
ジェラルド「はい、あなたの意見も聞きたいんです」
…
……
ジェリーに連れられてきたのは、街の中心にある高級ブランド店だった。
スタイリストさん達に囲まれる中、映画のイメージにあったものをと、ジェリーは様々な衣装を試す。
〇〇「あ、この衣装!」
ジェラルド「……」
鏡の前に立ったジェリーは、全身を黒で固めたこれまでとイメージを一新する衣装を身につけていた。
(かっこいい……! まるで別人みたい)
髪も専門のスタイリストに黒っぽく染められて、鋭さが見え隠れする。
ジェラルド「似合いますか?」
私とスタイリストさん達の方を振り向き、彼が右足を軸に一回転する。
〇〇「すごく素敵です」
スタイリスト「監督から聞いてきたイメージとも合致するかと」
それを聞いて、ジェリーが小道具の銃を構える。
〇〇「……!」
不意に手を引かれたかと思うと、気づけば私の体は、彼の片腕に抱かれていた。
ジェラルド「どうでしょう? 役どころのスパイのイメージだと、こんな感じでしょうか?」
ジェリーが、鏡の前でポーズを決める。
〇〇「……!」
同じ鏡に映った私の顔は真っ赤で……
(恥ずかしい……)
その後も、細かな衣装合わせは続いたけれど、私はひとり、胸の動悸を抑えることに必死になっていた…-。