ジェリーと車に乗り、彼行きつけのレストランに向かっていると…-。
マネージャー「ジェリー、外から見えないからってイチャつかないでくださいね」
ジェラルド「……! 何言ってるんですか」
〇〇「……!」
運転席にいるマネージャーさんにからかわれるように言われて、ジェリーが顔を赤くさせた。
ジェラルド「僕がいつ、スキャンダルを起こしたっていうんですか?」
マネージャー「確かに、その手の噂はまったく立ちませんけどね。 けど、別々にレストランで集合する形にしてくだされば、もっと安全でしたし。 〇〇様を先に歩かせることもなかったんですよ?」
ジェラルド「それは……悪いと思ってますけど……」
困ったように言う様子に、マネージャーさんが仕方なさそうに口元を緩める。
ジェラルド「僕が、〇〇と少しでも一緒に過ごしたかったんです」
(え……)
その時、道路の窪みで車が跳ねた。
〇〇「……っ!」
マネージャー「っと! すみません!!」
ジェラルド「大丈夫ですか? 〇〇」
ジェリーは、私の体を支えるように、手を伸ばしてくれて……
(きょ、距離が近い……!)
どきりと心臓が大きく波打つ。
ジェラルド「……大丈夫?」
〇〇「……」
(どうしよう……)
こんなに触れるほど近くに、ジェリーのような人がいると……
胸が早鐘を打っていて、私は何も言葉にできず、ただ小さく頷いた。
ジェラルド「もう少しで着きますからね」
柔らかく笑いかけてくれて、私を支えてくれた腕を戻す。
(あ……この笑顔)
それは、控室で私に見せてくれた、あの人懐っこい無邪気な笑顔……
(王子様みたいに洗練されていて、かと思えば無邪気に笑って……)
(ジェリーのいろんな表情を、もっと見てみたい……)
目鼻立ちの通った横顔を見て、私はそんなことを思っていた…-。
…
……
やがて車は目的地に着いたようで…-。
建物の入り口に立ったガードマンにマネージャーさんが顔を見せると、地下に続く駐車場へと案内された。
ガードマン「どうぞ、こちらへ」
マネージャー「いつもどうも」
店は駐車場から店内の入り口まで、完全なセキュリティが敷かれており、外から来客者の顔が見えないようになっていた。
(有名人って大変なんだな……)
そんな浅はかな感想しか抱くことのできない自分にため息を吐きながら、私は車を降りた…-。
こうして通されたのは、落ち着いた雰囲気のレストランだった。
綺麗な夜景を一望することのできる店内に、優雅なクラシック音楽が流れている。
(素敵なお店……)
ジェラルド「緊張してる?」
〇〇「はい、少しだけ……」
ジェラルド「そんなに、固くならなくても大丈夫ですよ! カジュアルなお店ですし」
机を挟んで、普通に食事を進めているジェリーをうかがう。
ジェラルド「お口に合いますか?」
〇〇「……! はい、ありがとうございます」
くすりと彼の唇から笑い声が漏れる。
ジェラルド「そういえば、僕の映画はどうでしたか?」
私の緊張を解そうとしてくれてか、ジェリーが問いかけてくれた。
〇〇「えっと、素敵な恋の話だと思いました」
ジェラルド「ええ、とても丁寧に二人の気持ちが描かれている素敵な脚本ですよね」
ジェリーはそのまま映画の撮影時の裏話をいろいろと聞かせてくれた。
その様子は、とても活き活きとしていて……
彼が本当に映画の仕事が好きなことが伝わってきた…-。