こうして、ジェラルドさんが主演を務めた映画の上映は無事終わった。
劇場に詰めかけたファンの中には、感極まって泣いている子もいる。
(素敵な映画だったな……)
映画の内容は、都会に出て働く女の子と、その会社の社長役に扮するジェラルドさんの、可愛らしいラブコメディだった。
ラストシーンの余韻に浸りながらも、私は招待してくれたお礼を伝えに、ジェラルドさんのいる控室へと向かった…-。
〇〇「ジェラルドさん、いらっしゃいますか? 〇〇です」
ノックをして、声をかけると……
ジェラルド「わぁ……! 来てくれてたんですね、ありがとう!!」
扉が開かれると同時に、ジェラルドさんは満面の笑顔で出迎えてくれた。
アメジスト色の澄んだ瞳と、亜麻色の金髪が美しく輝く。
(目の前で見ると……ますますかっこいい)
さきほどまでスクリーンの中にいた人が、こうして私の目の前にいる……
その事実に、胸がかすかに高鳴ってくる。
ジェラルド「もし来てくれなかったらどうしようって思ってたんです。 本当にありがとう!」
ジェラルドさんは嬉しそうに目を細めて、私の手を両手で包んでくれる。
〇〇「……っ」
一瞬、綺麗な手のひらの温度に戸惑いを感じてしまった。
ジェラルド「ふふ……どうしたんですか?」
〇〇「いえ、少し緊張していて……」
吸い込まれそうな大きな瞳に見つめられていると思うと、気持ちが落ち着かない。
ジェラルド「思っていた通り、可愛らしい方なんですね」
くすりとジェラルドさんが微笑む。
ジェラルド「それに、あなたの手……とても柔らかくて、優しい感じがします。 ふふっ、僕、好きなんです、こういう手の人。 僕のことはもっと気軽に、ジェリーって呼んでくださいね!」
〇〇「ジェ、ジェリー……さん!?」
ジェラルド「はい! あ、けれど『さん』はいらないですよ? 〇〇」
〇〇「……っ、はい、ジェリー……」
少し面はゆい気持ちで名前を呼ぶ。
(とっても親しみやすい人……)
にこやかに振る舞うその態度は、舞台の上での王子様のような姿とは別で……
人懐っこい彼の雰囲気に、私の緊張も次第に解れていった。
ジェラルド「そうだ、あなたのために、この後はオフを取ってあるんです」
〇〇「私のために……?」
ジェラルド「はい! せっかくだから、一緒に食事に行きたいなと思って」
〇〇「……はい! ありがとうございます」
舞台の上では見ることがなかった、その柔らかな笑顔が嬉しくて、胸がいっぱいになる。
こうして私達は、さっそく劇場を出ることにした…-。