第2話 ジェリーと呼んで

こうして、ジェラルドさんが主演を務めた映画の上映は無事終わった。

劇場に詰めかけたファンの中には、感極まって泣いている子もいる。

(素敵な映画だったな……)

映画の内容は、都会に出て働く女の子と、その会社の社長役に扮するジェラルドさんの、可愛らしいラブコメディだった。

ラストシーンの余韻に浸りながらも、私は招待してくれたお礼を伝えに、ジェラルドさんのいる控室へと向かった…-。

〇〇「ジェラルドさん、いらっしゃいますか? 〇〇です」

ノックをして、声をかけると……

ジェラルド「わぁ……! 来てくれてたんですね、ありがとう!!」

扉が開かれると同時に、ジェラルドさんは満面の笑顔で出迎えてくれた。

アメジスト色の澄んだ瞳と、亜麻色の金髪が美しく輝く。

(目の前で見ると……ますますかっこいい)

さきほどまでスクリーンの中にいた人が、こうして私の目の前にいる……

その事実に、胸がかすかに高鳴ってくる。

ジェラルド「もし来てくれなかったらどうしようって思ってたんです。 本当にありがとう!」

ジェラルドさんは嬉しそうに目を細めて、私の手を両手で包んでくれる。

〇〇「……っ」

一瞬、綺麗な手のひらの温度に戸惑いを感じてしまった。

ジェラルド「ふふ……どうしたんですか?」

〇〇「いえ、少し緊張していて……」

吸い込まれそうな大きな瞳に見つめられていると思うと、気持ちが落ち着かない。

ジェラルド「思っていた通り、可愛らしい方なんですね」

くすりとジェラルドさんが微笑む。

ジェラルド「それに、あなたの手……とても柔らかくて、優しい感じがします。 ふふっ、僕、好きなんです、こういう手の人。 僕のことはもっと気軽に、ジェリーって呼んでくださいね!」

〇〇「ジェ、ジェリー……さん!?」

ジェラルド「はい! あ、けれど『さん』はいらないですよ? 〇〇」

〇〇「……っ、はい、ジェリー……」

少し面はゆい気持ちで名前を呼ぶ。

(とっても親しみやすい人……)

にこやかに振る舞うその態度は、舞台の上での王子様のような姿とは別で……

人懐っこい彼の雰囲気に、私の緊張も次第に解れていった。

ジェラルド「そうだ、あなたのために、この後はオフを取ってあるんです」

〇〇「私のために……?」

ジェラルド「はい! せっかくだから、一緒に食事に行きたいなと思って」

〇〇「……はい! ありがとうございます」

舞台の上では見ることがなかった、その柔らかな笑顔が嬉しくて、胸がいっぱいになる。

こうして私達は、さっそく劇場を出ることにした…-。

 

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