第1話 ロマンディアの白薔薇

映画の国・ロマンディア 白の月…-。

ジェラルドさんから届いた映画の初日舞台挨拶への招待状を持ち、私は劇場の前に立っていた。

(ずいぶんと大きな劇場……)

外では彼のファンと思われる女の子達が、大勢騒いでいる。

それを横目で見ながら、私は扉をくぐり上映ホールへと向かった。

着いた席は、後方にある関係者や業界人のための貴賓席で……

(いいのかな? こんな特別な席に座っても)

劇場の前の方ではジェラルドさんのファン人達が、今か今かと開始を待っている。

すると分厚いビロードの幕が開いて…-。

ファンの女の子「きゃああああああああっ!」

ファンの女の子「ジェラルドくーーん、こっち向いてーっ!!」

舞台上に上がった、まさに王子様らしい格好のジェラルドさんに、黄色い歓声が向けられる。

ジェラルド「本日は記念すべき初日公開日を、こうして迎えられたことを嬉しく思っています。 今回の映画は美しい景色も一緒に堪能できるので、是非、その辺りも見ていただきたいです」

ジェラルドさんが口を開く度に人々の歓声が上がり、カメラのフラッシュがまぶしく焚かれる。

(すごいな、ジェラルドさん……)

何人もの役者さんと並んでも、彼の輝きだけは別格に見える。

(この国の王子にして、絶大な人気を誇る正統派人気俳優)

その容姿と、謙虚で無垢な人柄に、ジェラルドさんは『ロマンディアの白薔薇』と呼ばれていた。

(その呼び名の通り……)

そんな素敵な人に特別な席へ招待してもらえたことに、ちょっとだけ優越感に浸ってしまいそうになる。

ジェラルド「皆さん、本当に声援をありがとう。 それではどうか、この後の上映を楽しんでいってください」

再び、大きな歓声が上がる。

私はどこか昂揚するような気持ちで、スクリーンを見つめていた…-。

 

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