映画の国・ロマンディア 白の月…-。
ジェラルドさんから届いた映画の初日舞台挨拶への招待状を持ち、私は劇場の前に立っていた。
(ずいぶんと大きな劇場……)
外では彼のファンと思われる女の子達が、大勢騒いでいる。
それを横目で見ながら、私は扉をくぐり上映ホールへと向かった。
着いた席は、後方にある関係者や業界人のための貴賓席で……
(いいのかな? こんな特別な席に座っても)
劇場の前の方ではジェラルドさんのファン人達が、今か今かと開始を待っている。
すると分厚いビロードの幕が開いて…-。
ファンの女の子「きゃああああああああっ!」
ファンの女の子「ジェラルドくーーん、こっち向いてーっ!!」
舞台上に上がった、まさに王子様らしい格好のジェラルドさんに、黄色い歓声が向けられる。
ジェラルド「本日は記念すべき初日公開日を、こうして迎えられたことを嬉しく思っています。 今回の映画は美しい景色も一緒に堪能できるので、是非、その辺りも見ていただきたいです」
ジェラルドさんが口を開く度に人々の歓声が上がり、カメラのフラッシュがまぶしく焚かれる。
(すごいな、ジェラルドさん……)
何人もの役者さんと並んでも、彼の輝きだけは別格に見える。
(この国の王子にして、絶大な人気を誇る正統派人気俳優)
その容姿と、謙虚で無垢な人柄に、ジェラルドさんは『ロマンディアの白薔薇』と呼ばれていた。
(その呼び名の通り……)
そんな素敵な人に特別な席へ招待してもらえたことに、ちょっとだけ優越感に浸ってしまいそうになる。
ジェラルド「皆さん、本当に声援をありがとう。 それではどうか、この後の上映を楽しんでいってください」
再び、大きな歓声が上がる。
私はどこか昂揚するような気持ちで、スクリーンを見つめていた…-。