フロアに、管弦楽の甘い調べが流れ始める…―。
グウィード「大丈夫。僕に任せて♪」
○○「はい」
グウィードさんに力強く手を握られ、私の胸はまたトクンと音を鳴らす。
リードされるまま、足を前に踏み出した。
グウィー「上手だよ、子猫ちゃん」
○○「ありがとうございます」
(褒められた……嬉しいな)
彼の方へ視線を向けると、すぐに目が合う。
私達は自然に笑い合っていた。
グウィード「結局、今日僕は君と出会うためにここに来たようだね◆」
○○「え……?」
グウィード「どんなに離れようとしても、君の傍に戻って来てしまう♠ まるで、僕は蝶で、君という美しい花に引き寄せられているかのようだ◆」
○○「う、美しい花なんて……そんなことないです!」
グウィード「そうかな?」
○○「そうですよ……でも」
グウィード「でも?」
○○「グウィードさんが戻って来てくれる花になれるなら……それは嬉しいです」
グウィード「子猫ちゃん……」
○○「グウィードさんと踊れて、すごく楽しいですから」
そう言うと、グウィードさんが驚いたように目を見開いた。
そして、彼は少し困ったような笑みを浮かべた。
グウィード「全く君は……」
○○「え? っ……!」
グウィードさんに引き寄せられ、上半身が反り返る。
彼の顔が、まるでキスをしてしまいそうなほど近づいた。
グウィード「そんなに素直だと、僕はそろそろこの花の香りに溺れてしまいそうだ」
○○「グウィードさん……」
グウィードさんに見つめられると、体中が熱くなっていく…―。
彼の声、彼の笑顔、そのすべてが私を支配して動けなくさせてしまう。
(恥ずかしいけれど……それ以上に……ドキドキしてる)
その時、私の胸から羽の違う蝶が飛び立った。
○○「え……?」
青と黄色だったはずの羽は、今は黄色と紫に変わっている。
グウィードさんからも、羽に色が違う蝶が飛び上がった。
グウィード「どうやら交代の時間のようだね◆」
○○「交代……?」
グウィード「蝶探しで見つけた相手は、最初のダンスのパートナー♠ その後はこうやって相手を入れ替えていくんだ◆」
(じゃあ、グウィードさんともまたこれで離れてしまうの?)
どうしようもない寂しさが、胸に押し寄せてくる。
(私、まだグウィードさんと……)
アナウンス「さあ、蝶に従ってダンスのパートナーを交代してください」
周りの人々が蝶に従って別に相手とダンスを踊り始める。
○○「あの……」
(決まりだから、代わらないといけないのかな……)
私は自分の気持ちを押し込めて、グウィードさんから体を少し離そうとした。
けれど…―。
○○「グウィードさん?」
彼は私を抱きしめたまま、離そうとしなかった。
グウィード「子猫ちゃん、僕の元から去らないで。 もう、君から離れたくない」
○○「グウィードさん……」
私を抱きしめる腕が、さらに強くなっていく。
私は、それに答えるように彼の胸に顔をうずめた。
グウィード「!」
○○「……私の前から去ってばかりなのは、グウィードさんの方です」
グウィード「子猫ちゃん……」
○○「私はずっとグウィードさんとお話がしたいって思っていたのに。 グウィードさん、私の傍にいてください」
グウィードさんはまぶたをそっと閉じると、宙を舞う蝶達に優しく手を滑らせる。
私とグウィードさんの蝶は、光になって消えていった。
(蝶が……)
フロアに新しい曲が流れ始めた。
彼が私から離れ、まるで一曲目の時のように恭しく手を差し出す。
グウィード「○○、もう一曲よろしいですか? 今宵の僕の……唯一のパートナーとして」
○○「はい……!」
彼の手を取り、再び踊り始める。
(もっとグウィードさんとお話をしたい)
(でも、今はこのままでいたい……)
彼の腕に身を委ねて、私は瞳を閉じる。
美しい調べの中、彼の暖かさと甘い香りが私を包んでいた…-。
おわり。