グウィード「これから、ゲームの時間なんだ◆」
暗闇の中、耳元でグウィードさんが囁く。
(え……?)
グウィード「僕がここに来たのは、ティアラのためじゃないんだ◆」
○○「それじゃあ、いったい何のために……?」
グウィード「ふふ、気になるかい? それじゃあ、子猫ちゃんにだけは特別に教えてあげよう♪ 実は……。 このパーティのマスターに頼まれて、ゲームの仕掛け人として来たんだよ♠」
○○「そうだったんですね……」
(だから、ティアラの見える場所や、蝶の飾りのことをよく知っていたんだ)
暗闇の中、スポットライトが主催者を照らす。
主催者「これよりちょっとしたゲームを行いたいと思います。どうぞ皆様お楽しみください」
主催者の言葉に、会場の人々が歓声を上げた。
そして再び暗闇になったかと思うと、すぐ傍にスポットライトが当たる。
光に照らし出されたのは、隣にいたグウィードさんだった。
(グウィードさん……?)
スポットライトの下で、彼は大仰に両手を広げる。
グウィード「どうやら宴の楽しさに惹かれて、蝶達が騒ぎ始めたようです」
グウィードさんが腕を振り上げると、暗いホールに色とりどりの蝶達が舞い始めた。
(すごい……綺麗)
蝶達は体から光を発し、色鮮やかな羽を広げて、人々の手元へ降り立った。
グウィード「皆様にとまった左右の羽の模様が違う蝶。その蝶と同じ羽の蝶を持つ人がこの会場におります♠ そのお相手が、今宵、あなたの最初のダンスのパートナー◆ さあ、どうぞ対になる蝶を探してください◆ きっと蝶が、皆様を導くでしょう♪」
グウィードさんが恭しくお辞儀をすると、再びホールに暗闇が戻る。
招待客は淡い蝶の輝きを頼りに、蝶を探し始めた。
(この蝶と対になる蝶か……)
私の胸にも、一匹の蝶がとまっている。
青い羽と黄色の羽を持つ美しい蝶…―。
(対の蝶はどこにいるんだろう……?)
○○「あの、グウィードさん…―」
彼に話を聞きたくて振り向くけれど、もうそこには彼の姿はなかった。
(またいない……)
一人取り残され、私は蝶探しに歩き始める。
周りの様子を見ていると、蝶は対の蝶の近くにくると、飛び立って教えてくれるらしい。
(じゃあ、私の蝶も対の蝶の近くに来たら飛んでくれるのかな?)
その光景を想像して、期待に胸が膨らんでいった…―。
…
……
庭に探しに出て、辺りを見渡す。
周りでは相手を見つけた人々が、お互いの話をしている。
(私の相手は、どこにいるんだろう)
そう思った時、一人の男性の姿が私の頭に過ぎる。
○○「グウィードさんが相手ならいいのに……」
つい声に出してつぶやいてしまい、慌てて口元を覆った。
けれどその時…―。
グウィード「子猫ちゃん、お相手は見つかったかな?」
○○「っ……!」
思っていた人が突然そこに現れ、胸が高鳴る。
○○「グウィードさん……!?」
その時、私の胸から優雅に蝶が飛び立った。
(え? ……もしかして)
蝶は、まっすぐにグウィードさんの元へ飛んでいく。
まるで、そこに待ち望んだ花があるかのように…―。