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グウィード『じゃあ存分に楽しんでね、子猫ちゃん◆』
○○『え? あ……。 行っちゃった……』
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(もう少し一緒に話せると思ったのに)
シャンパンを楽しみながら、招待客の話に耳を傾ける。
招待客の男「コロナ王家の方々が作られるティアラは、持ち主に栄光をもたらすそうですよ」
○○「そうなんですか?」
招待客の男「ええ。ですから、欲しいと思われる方は多いのではないでしょうか」
招待客の女「もちろんですわ。ティアラに選ばれるために着飾って来たんですから」
(栄光……すごいな、魔法でもかけられているみたい)
そんなことを考えながら、グラスに口をつける。
グウィード「お客様、飲みすぎですよ◆」
○○「っ……!」
聞き覚えのある声と甘い花の香りで、すぐに彼だとわかったけれども…―。
○○「グウィードさん……?」
振り向いても、もうそこに彼の姿はなかった。
(傍にいたかと思ったら、すぐに消えてしまう……)
(もう少し、一緒に話せたらいいのに)
もどかしさにため息を吐く。
すると…―。
招待客の男「ティアラがお披露目されるようですよ」
招待客の女「私達も見に行きましょう」
○○「え……? まっ、待ってください……!」
ティアラの方へと向かう人々の勢いに押され、私は倒れそうになってしまう。
(あ……!)
するとその時、転びそうになった私の体を、誰かがふわりと抱き止めてくれた。
(この甘い花の香り……)
グウィード「子猫ちゃん、大丈夫かい?」
○○「グウィード……さん?」
見上げると、グウィードさんの優しい眼差しが私を見つめていた。
グウィード「本当に危なっかしいね、子猫ちゃんは♠ 目を離したら、どこかに飛んで行ってしまいそうだ◆」
その瞳を見ると、彼が私のことを心配してくれたことが痛いほどわかった。
○○「す、すみません……!」
謝る私の手を、グウィードさんが優しく包み込んだ。
グウィード「子猫ちゃん、おいで。こちらからの方がティアラがよく見える♪」
○○「はい……!」
彼に導かれるまま、私は螺旋階段を登っていった。
…
……
グウィードさんと共に、二階からティアラを眺める。
彼の言う通り、この場所からはティアラがとてもよく見えた。
○○「これがコロナ国の方が作られたティアラなんですね。とっても綺麗……」
グウィード「そうだね。これだけの人が見たがるはずだ◆」
○○「きっとこれを受け取る方は、素敵な方なんでしょうね」
(誰が選ばれるんだろう。見てみたいな……)
グウィード「子猫ちゃんは欲しくないのかい?」
○○「私ですか? 私には立派過ぎますよ。今のおしゃれで精一杯です」
私は冗談めかして、スカートの裾を広げてみせる。
けれどグウィードさんは、笑うどころか、驚いたように仮面の奥の瞳を見開いた。
(え……?)
そして、その瞳はすぐに柔らかいものへと変わった。
その彼の表情があまりにも優しくて、私の胸がトクンと音を立てる。
○○「っ……」
(ビックリした)
(あんな顔で笑われたら……)
戸惑っていることに気づかれたくなくて、睫毛を伏せる。
グウィード「やっぱり君はおもしろいね♠」
囁くような優しい声が、頭上から降ってくる。
けれど…―。
グウィード「パーティは遅くまで続いているから、ほど良いところで帰った方がいい◆」
(え……?)
突然、拒絶するような言葉を投げかけられ、私はグウィードさんを見上げた。
○○「迷惑ですか?」
思わず口にした私の言葉に、グウィードさんは困ったように眉尻を下げた。
グウィード「そうじゃないよ。子猫ちゃんがいると僕は気になって……」
そこまで話すと、グウィードさんは自分の口を手で覆った。
○○「グウィードさん?」
グウィード「……いや、どうやら僕も酔ってしまったみたいだ♠」
肩をすくめると、彼は曖昧に笑う。
(何か、誤魔化した……?)
そう思わずにはいられない笑みだった。
私の視線から逃れたいのか、彼は私から少し離れる。
(またどこかに行ってしまう……?)
気づくと、私は彼の服を掴んでいた。
グウィード「子猫ちゃん?」
○○「あ……すみません」
グウィード「僕が恋しいのかな?」
○○「……はい」
グウィード「おや……」
グウィードさんが、くすりと笑みをこぼす。
グウィード「君は正直だね……♠ まいったな……」
顔を手で覆い、彼はクツクツと笑い声を上げる。
(手で隠しているけど、グウィードさん……)
(顔が赤くなってる?)
グウィード「困った子だ。だから君から離れていたのに」
○○「え……?」
顔から手を離すと、グウィードさんは私に笑いかける。
グウィード「子猫ちゃんの気持ちは嬉しいけど……」
そこまで話して、彼は片手を高く上げる。
それを合図に、突然、会場から灯りが消えた。
○○「何……!?」
グウィード「これから、ゲームの時間なんだ◆」
耳元で、グウィードさんの囁く声が聞こえる。
耳にかかる吐息に、顔が熱くなっていった…―。