私とグウィードさんの間を風が吹き抜けた。
彼はゆっくりと私の方へと歩いてくる。
グウィード「驚いた顔をしているね◆」
○○「はい……とても」
(リボンのこともだけど、まさかグウィードさんに会えるなんて思わなかった……)
グウィード「このリボンはちょっとイタズラ好きのようだね◆ もしかして、かわいい子猫ちゃんを驚かせたくなったのかな?」
グウィードさんが蝶の飾りを見つめる。
さっきまであんなに自由に舞っていたそれは、今は静かにグウィードさんの指にとまっていた。
グウィード「結んであげるよ♠」
○○「え?」
私が返事をする前に、グウィードさんは触れてしまうと思うくらい近くに寄ってくる。
(ちっ……近い……)
○○「あのっ……グウィードさん?」
少し身を引いて、慌てて彼を見上げた。
けれど彼は気にした様子もなく、蝶の飾りを私の手首に巻きつける。
(いい香り……これは、グウィードさんの……?)
甘く誘うような花の香りを感じて、少しだけ息を止めた。
○○「……!」
彼の少しだけ冷たい指先が手首に触れて、思わず手を震わせた。
(顔が熱い……きっと真っ赤になってる)
(グウィードさんに気づかれなければいいけど)
グウィード「うん、よく似合っているよ◆」
○○「ありがとう……ございます」
グウィード「いいえ、どういたしまして。顔が真っ赤な子猫ちゃん◆」
○○「……っ!」
グウィードさんに顔を覗き込まれて、頬がさらに熱くなっていく。
そんな私を見て、彼は面白そうに笑った。
(遊ばれている気がする……)
彼はそれ以上何も言わず、私に右手を差し出した。
グウィード「子猫ちゃん、中へ入ろうか♪」
○○「……はい」
グウィードさんの手を取り、私は煌びやかな建物の中へと足を踏み入れる。
○○「綺麗……!」
パーティホールへ通されると、私は感動のあまり、ため息を吐いた。
幻想的な灯りの中で、招待客が身につけた蝶が淡い光を放つ。
○○「すごいですね。まるで星を散りばめたみたい」
あまりの美しさに、私はまばたきをするのも忘れて、ホールを眺める。
すぐ傍で、グウィードさんの小さな笑い声が聞こえた。
グウィード「その様子だと、パーティは楽しめそうだね♠」
○○「はい!」
グウィード「それはよかった」
そう言うと、彼は私から離れて向き直る。
○○「グウィードさん?」
グウィード「じゃあ存分に楽しんでね、子猫ちゃん◆」
○○「え? あ…―」
別れを告げると、すぐに彼の姿は人々の中にまぎれ消えてしまった。
○○「行っちゃった……」
(もう少し一緒に話せると思ったのに)
一人取り残され、ほんの少し寂しさを感じる。
○○「……せっかく招待状をいただいたんだから楽しまないと」
背筋を伸ばすと、私はフロアの中央へと足を踏み出す。
幻想的な光が、きらきらとホールを彩っていた…―。