一緒に収穫祭の街を楽しもうとネペンテスさんに誘われて、二人で、活気溢れる街を歩き始める。
ネペンテス「はるばるロトリアを訪れたからには、まだ見ぬ食を追及しなければ……」
熱を込めて言うネペンテスさんに、少しだけ困惑する。
(やっぱり相変わらず、食に対してすごく熱心なんだな)
○○「楽しみですね。どんな食べ物があるのか」
ネペンテス「おお……っ! あなた様もそう思われますか?」
○○「あ、えっと……」
ネペンテスさんが嬉々として目を輝かせるので、またしても戸惑ってしまう……
ネペンテス「では、さっそく参りますよ!」
ネペンテスさんに誘われ、収穫祭で賑わう街を歩いていると……
ネペンテス「ああ、何ともグロテスクで不思議なかぼちゃ……」
ネペンテスさんが、店先のかぼちゃのような食べ物を指差して恍惚とした顔になった。
それは、かぼちゃにしては不思議にひしゃげていて、おどろおどろしい色の斑点模様がついている。
(あれはかぼちゃなのかな? ……ちょっと不気味な感じがするけど)
収穫祭らしくいたずらと遊び心のある食べ物だと言えば、納得できるものの、さすがに口にしたいとは思えないようなものだった。
ネペンテス「店主、これを一つ、いただけますか」
店主「はいよ!」
(やっぱり食べるんだ……)
ネペンテス「この見目からは想像できない味だろうことが、何よりも楽しみで……」
ネペンテスさんは目を輝かせながら、大きく口を開けて、一口かじった。
すると……
(あれ、ネペンテスさん急に表情がなくなったような)
ネペンテス「……。 では、次に参りましょうか」
○○「え? ネペンテスさん?」
ネペンテスさんは、かぼちゃをそしらぬ顔で店先に並べ直し、さっさと歩き出してしまった。
○○「あの、どうしたんですか?」
ネペンテス「予想通りでした」
○○「え?」
ネペンテス「予想通りだったのです。ですから、あれ以上食べる価値がありませんでした……」
心底残念そうな顔をして、ネペンテスさんは深いため息をつく。
ネペンテス「ここへ来てから、まだ一度も満足のいく料理に出会っていません」
○○「でも、これから出会えるかもしれないですし……」
ネペンテス「ああ、そうでした! 街に漂う食べ物の香りにつられて忘れるところでしたが……」
ネペンテスさんは、歩みを止めて、くるりと私に向き直る。
ネペンテス「仮装をしてパーティに出れば、特別な美食にありつけると、ウィル王子に聞いていたのです」
(ウィルさん……?)
(そういえば、今回の収穫祭は映画の国のウィル王子がプロデュース、って書いてあった)
私は招待状に書いてあったことを思い出す。
ネペンテス「早速、仮装の衣装を城へ取りに行かなければ」
ネペンテスさんは、よだれを垂らしそうな顔をして、踊るように歩き出した。
城へ到着したところで、またしても突然、ネペンテスさんが鼻をひくつかせる。
ネペンテス「この香りは……」
○○「あ、待ってください!」
いい香りに誘われるように、ネペンテスさんは方向転換をしてしまう。
(大変な一日になる気がする……)
穏やかな昼下がりの日が差し込む城の中を、彼を追って駆けた……