第4話 それぞれの気持ち

神官様が去った後、私は顔を上げられずに、澄快の腕に抱きついていた。

―――――

○○『こ、この人が運命の相手かどうか見て欲しくて、どうしたらいいかと中をうかがっていたんです……!』

―――――

(どうしよう……私、なんてことを言ってしまったんだろう)

澄快「おい」

心なしか澄快の声が低く感じて、気まずさが増していく。

○○「はい……」

(もしかして、怒っているんじゃ……?)

澄快「もういなくなったから離していいぞ」

○○「あ……ご、ごめん」

私は慌てて澄快の腕を離した。

澄快「謝んなよ。それよりいいのか? あんなこと言って」

彼は私から顔を背けると、新しい煙草を取り出す。

○○「ついとっさに……」

澄快「ったく、無茶しやがって、オマエは」

彼の笑いを含んだ声に、私はホッと息を吐く。

○○「変なことになってごめん」

澄快「あ? いや、もともとはオレがオマエを巻き込んだんじゃねーか。 まぁ、神官にああ言っちまった手前、行かねーわけにはいかねーが」

○○「そうだよね……本当にごめんなさい!」

(結局、澄快の迷惑にしかなってない……)

申し訳なさから、彼に向けて頭を下げる。

澄快「だからいいって言ってんだろ! オマエとなら別に嫌でもねーよ!」

○○「え?」

澄快「うおっ! 口が滑った!」

彼はハッと口を閉じると、困ったように眉を寄せた。

澄快「そっ、それより! オマエはいいのか?」

○○「え?」

澄快「ほら、運命の相手っての……わかっちまうんだぞ?」

○○「そう言われると、ちょっとだけ気になる……かな」

澄快「へぇ、やっぱそういうもんなのか?」

自分の感情をうまく説明できず、私は胸の前で手を握る。

○○「澄快は平気なんだ?」

澄快「オレ自体はもともと興味あったわけじゃねーし……」

腕を組んで考え出したかと思うと、ふと彼の表情から明るさが消えた。

(どうしたんだろう?)

澄快は私をじっと見つめて、目を細めた。

澄快「けど今は……ちょっと怖ぇかもな」

○○「え? どうして?」

澄快「どうしてって、まさかオマエと水鏡を覗くことになるとは思わなかったからな」

○○「え……」

澄快「もし二人で水鏡を覗いて、オマエが……」

○○「私が?」

澄快「いや、そのオマエが……」

それ以上言うのをためらっているのか、彼の唇が震えた。

(何を言おうとしているんだろう……)

澄快の視線があまりにもまっすぐで……

私の鼓動が知らず知らずのうちに速くなっていく。

けれど…―。

澄快「やっぱいい! ま、何があっても安心しろ。オレが守ってやるから。 オレもこの際だ。覚悟決めるしかねぇな!」

○○「澄快?」

何か誤魔化すように言うと、彼は先に歩き出す。

澄快「宿どこだ? 送っていってやる。なんだったら、飯にでも行くか?」

○○「あ、うん……」

夕焼けに照らされて、澄快の背中が優しい色を帯びる。

(なんて言おうとしてたんだろう? 最後まで聞きたかったな……)

彼の背中を見つめながら、ほんの少し胸が締めつけられるような苦しさを覚えた…―。

 

<<第3話||太陽覚醒へ>>