飛鳥さんと別れた後…-。
もやもやとする気持ちを紛らわすために、私は市場にやってきていた。
(嫉妬……か。飛鳥さんは成功だって言ってたけど)
―――――
藤目『……貴方の運命の人はその方なのでしょう。ならば、それを邪魔するわけにはいきませんね。 人の恋路を邪魔するものはなんとやら……と言いますからね』
―――――
(藤目さんに……嫉妬してる様子はなかったよね)
軋む胸を押さえながら、私は彼に言われたことを思い出していた。
(そういえば藤目さん、オムライスが食べたいって言ってた)
彼に会いたい気持ちが募り、私はそのことを口実に新鮮な卵を購入する。
そして、藤目さんが宿泊している部屋へと向かったのだった…―。
部屋の扉をノックすると、ゆっくりと扉が開き、藤目さんは顔を覗かせた。
けれど…―。
藤目「……どうぞ」
(藤目さん……?)
儀式の前に見せてくれた、穏やかな木漏れ日のような笑顔はそこになかった。
暗い顔をした藤目さんに促され、私は中へと入った…―。
藤目さんの部屋には、原稿が散らばり、インクの匂いが漂っていた。
(原稿を書いていたのかな……邪魔をしてしまったんじゃ)
○○「あの…―」
藤目さんを振り返った瞬間…―。
(え…―)
体が、背後から強く抱きしめられた。
○○「ふ……藤目さん?」
痛いほどに抱きしめられ、胸が早鐘を打ち始める。
藤目「……楽しかったですか?」
○○「え……」
藤目「あの男といる時の貴方は、とても楽しそうな顔をしていた」
(藤目さん、見ていたんだ……!)
藤目「何を話していたんですか?」
○○「……」
(飛鳥さんのことを思うと、本当のことは言えない……)
藤目「私に言えないことなんですね」
藤目さんの瞳に、暗い色が差し込んだ…―。