第4話 私の運命の人

水鏡を見に訪れる恋人達を見ていると・・・-。

藤目「・・・・・・」

藤目さんが口元に手をあてて、ふっと吐息を漏らした。

藤目「さて、そろそろ宿泊先に戻って小説の続きを書かなくてはなりません」

よく見るとその目の下には、微かにクマができていた。

○○「・・・・・・藤目さん、もしかしてあまり寝ていないのでは?」

藤目「ええ、一度深く考えてしまうと時間を忘れてしまいますからね。今日も気づけば朝日が昇っていました」

(やっぱり、徹夜だったんだ)

○○「お体が心配です」

私がつぶやいた言葉に、藤目さんがぴくりと反応をする。

藤目「○○さんはお優しい・・・・・・。 先ほども私の寝癖や襟を直してくださった・・・・・・貴方はまるで私の奥さん」

顎に手をあてながら、藤目さんは何やらぶつぶつとつぶやき始める。

○○「あの・・・-」

言いかけた時、藤目さんにそっと手を握られた。

藤目「もしよければ、私に料理を作ってくれませんか?」

○○「えっ・・・・・・!」

藤目「私は、小説の執筆中はそれ以外のことをすべて後回しにしてしまうので・・・・・・。 貴方の手料理を食べれば、少し元気になれるかもしれません。 まわりくどいのはやめましょう。もっと簡単にいいます。つまり、私のお世話をしてください」

(藤目さんのお世話を・・・・・・私が?)

戸惑う私には構わず、藤目さんは私の手を取ったまま、にこにこと微笑んでいて・・・・・・

○○「・・・・・・はい」

突然の言葉にうろたえながらも、有無を言わせぬ笑顔を向けられつい頷いてしまう。

藤目「ありがとう、○○さん」

藤目さんの大きな手が、私の両手を包み込んだ。

(で、でもお世話って・・・・・・何をしたら)

その時・・・-。

??「水鏡は見なくていいのですか?」

(えっ・・・・・・?)

声がした方を見ると、藤目さんの国の人達と同じような装いをした、見知らぬ男性が立っていた。

飛鳥「・・・・・・飛鳥と申します。突然申し訳ありません、お二人が水鏡を覗かないことが気になりまして」

○○「・・・・・・!」

(私と藤目さんが・・・・・・?)

途端、心臓がドキドキと鳴り始める。

私が口を閉ざしていると、飛鳥さんは挑発的な目で藤目さんを見た。

飛鳥「本当は、水鏡を見るのが怖いのではないですか? 藤目王子」

藤目「・・・・・・不躾な方ですね」

飛鳥さんの言葉に、藤目さんが不快そうに眉根を寄せた。

飛鳥「貴方は彼女の運命の相手ではない・・・・・・その事実を告げられることが怖いのでは?」

(えっ・・・・・・)

その言葉に、私の心がひどく揺さぶられる。

(どうして・・・・・・こんなに胸が騒いでいるんだろう)

(藤目さん・・・・・・)

思わず、隣にいる藤目さんの顔を見上げてしまう。

彼は何も言わず、ただ飛鳥さんを見据えていた。

飛鳥「では、私が先に試させていただきます」

突然、飛鳥さんが私の手を取って強引に歩き始める。

○○「ちょっ、ちょっと・・・・・・やめてください!」

(飛鳥さん、何を考えているの・・・・・・!?)

飛鳥さんは、私を水鏡の前まで連れて行く。

二人で水鏡を覗き込むと・・・-。

飛鳥「おお・・・・・・! 私の運命の相手は、あなたでしたか!!」

○○「!?」

飛鳥さんの大きな声が、神殿にこだました・・・-。

 

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