水鏡を見に訪れる恋人達を見ていると・・・-。
藤目「・・・・・・」
藤目さんが口元に手をあてて、ふっと吐息を漏らした。
藤目「さて、そろそろ宿泊先に戻って小説の続きを書かなくてはなりません」
よく見るとその目の下には、微かにクマができていた。
○○「・・・・・・藤目さん、もしかしてあまり寝ていないのでは?」
藤目「ええ、一度深く考えてしまうと時間を忘れてしまいますからね。今日も気づけば朝日が昇っていました」
(やっぱり、徹夜だったんだ)
○○「お体が心配です」
私がつぶやいた言葉に、藤目さんがぴくりと反応をする。
藤目「○○さんはお優しい・・・・・・。 先ほども私の寝癖や襟を直してくださった・・・・・・貴方はまるで私の奥さん」
顎に手をあてながら、藤目さんは何やらぶつぶつとつぶやき始める。
○○「あの・・・-」
言いかけた時、藤目さんにそっと手を握られた。
藤目「もしよければ、私に料理を作ってくれませんか?」
○○「えっ・・・・・・!」
藤目「私は、小説の執筆中はそれ以外のことをすべて後回しにしてしまうので・・・・・・。 貴方の手料理を食べれば、少し元気になれるかもしれません。 まわりくどいのはやめましょう。もっと簡単にいいます。つまり、私のお世話をしてください」
(藤目さんのお世話を・・・・・・私が?)
戸惑う私には構わず、藤目さんは私の手を取ったまま、にこにこと微笑んでいて・・・・・・
○○「・・・・・・はい」
突然の言葉にうろたえながらも、有無を言わせぬ笑顔を向けられつい頷いてしまう。
藤目「ありがとう、○○さん」
藤目さんの大きな手が、私の両手を包み込んだ。
(で、でもお世話って・・・・・・何をしたら)
その時・・・-。
??「水鏡は見なくていいのですか?」
(えっ・・・・・・?)
声がした方を見ると、藤目さんの国の人達と同じような装いをした、見知らぬ男性が立っていた。
飛鳥「・・・・・・飛鳥と申します。突然申し訳ありません、お二人が水鏡を覗かないことが気になりまして」
○○「・・・・・・!」
(私と藤目さんが・・・・・・?)
途端、心臓がドキドキと鳴り始める。
私が口を閉ざしていると、飛鳥さんは挑発的な目で藤目さんを見た。
飛鳥「本当は、水鏡を見るのが怖いのではないですか? 藤目王子」
藤目「・・・・・・不躾な方ですね」
飛鳥さんの言葉に、藤目さんが不快そうに眉根を寄せた。
飛鳥「貴方は彼女の運命の相手ではない・・・・・・その事実を告げられることが怖いのでは?」
(えっ・・・・・・)
その言葉に、私の心がひどく揺さぶられる。
(どうして・・・・・・こんなに胸が騒いでいるんだろう)
(藤目さん・・・・・・)
思わず、隣にいる藤目さんの顔を見上げてしまう。
彼は何も言わず、ただ飛鳥さんを見据えていた。
飛鳥「では、私が先に試させていただきます」
突然、飛鳥さんが私の手を取って強引に歩き始める。
○○「ちょっ、ちょっと・・・・・・やめてください!」
(飛鳥さん、何を考えているの・・・・・・!?)
飛鳥さんは、私を水鏡の前まで連れて行く。
二人で水鏡を覗き込むと・・・-。
飛鳥「おお・・・・・・! 私の運命の相手は、あなたでしたか!!」
○○「!?」
飛鳥さんの大きな声が、神殿にこだました・・・-。