藤目さんの微笑みが、柔らかな陽の光に包み込まれる・・・-。
藤目「・・・・・・」
藤目さんは、まじまじと私のことを見つめてきた。
○○「あの・・・・・・私、どこか変ですか?」
藤目「素敵なドレスをお召しですね。貴方によく似合っている」
○○「え・・・・・・?」
儀式のため、私は純白のドレスに身を包んでいた。
(なんだか、恥ずかしい・・・・・・)
藤目「すみません・・・・・・。 小説家なのに、気の利いた言葉も出ず、思ったままの気持ちを伝えてしまうなんて・・・・・・駄目ですね」
そのまま、彼は難しい顔をして考え込んでしまった。
○○「いえ・・・・・・すごく嬉しいです。ありがとうございます」
藤目「そうですか? それならばよかったです」
目を細めて微笑まれると、私の心も温かくなる。
藤目「○○さんは、ここで何をしているんですか?」
○○「私は、婚宴の儀に招待されていまして」
藤目「婚宴の儀・・・・・・? それなら、私もその場で宣誓の代わりに朗読の披露をすることになっています」
○○「藤目さんが朗読されるんですか?楽しみです」
藤目「何度も断ったんですけどね。なかなかしつこくて・・・・・・それはもう私の担当編集者並みに」
藤目さんの眉尻が困ったように下げられる。
妙に艶やかなその様子に、胸がドキッと音を立てた。
藤目「ですが、珍しく筆が乗っているので、もうしばらく執筆を続けたく・・・・・・困りました」
○○「・・・・・・藤目さんらしいですね」
藤目「その通りです。貴方はよくわかっていらっしゃる。 国の代表として、などという立場がなければ・・・・・・このままこの陽の光に溶け込んでしまいたいのに」
藤目さんは伸びをすると、ゆっくりと立ち上がった。
私達は、婚宴の儀が行われる神殿へと急ごうとするけれど・・・-。
(あっ・・・・・・)
私に背を向けた藤目さんの後ろ毛は、ぴょこんと跳ねてしまっていた。
(寝癖・・・・・・かな)
○○「藤目さん、髪が・・・・・・」
藤目「髪ですか?」
少し背伸びをして、藤目さんの髪に手を触れる。
そっと髪を撫でると、寝癖はすぐに直ってくれた。
○○「はい、もう大丈夫ですよ」
藤目「・・・・・・」
藤目さんは、視線を逸らしうつむく。
(どうしたんだろう?)
○○「藤目さん?」
顔を覗き込もうとすると、どこか嬉しそうな色を湛えた彼の瞳と目が合った。
藤目「貴方のその振る舞いは・・・・・・まるで、私の奥さんみたいですね」
○○「えっ・・・・・・!」
(私が、藤目さんの奥さん・・・・・・)
藤目「ああ、すみません。つい」
おかしそうに笑う藤目さんを前に、私の頬は熱くなっていく。
藤目さんが紡いだ言葉が、私の胸にいつまでも響いていた・・・-。