泡沫の国・アフロス 蒼の月・・・-。
この時期、世界中の王族達がこのアフロスの地に招かれる。
古から伝わる婚宴の儀により、神々からの祝福を受けるためと聞いていた。
私も、儀式に招待を受けてこの地へとやってきていた。
(いい天気)
神殿へ向かう途中、立ち並ぶ木々の隙間から木漏れ日がきらきらと輝いていた。
(本当に綺麗・・・・・・それになんだか神秘的)
(・・・・・・『木々の葉をくぐり粒となった光が、私と彼女に降り注ぐ』)
(『たったそれだけのことでも、私にはこの上ない幸せを感じることができた』)
私はシャーロット文学賞を受賞した藤目さんの小説、『木漏れ日の恋』の一節を思い出した。
(藤目さん、お元気かな?)
藤目さんは、文壇の国・東雲の王子で、王子でありながらも恋愛小説を書く作家でもあった。
(とても素敵な物語だったな)
木漏れ日に気を取られていると、儀式の時間が差し迫っていた。
(いけない。急がないと・・・・・・!)
儀式が行われる神殿へと急いでいると、目の端に見覚えのある姿を見つける。
(あれは・・・・・・藤目さん!?)
白い礼服を身にまとった藤目さんが、木漏れ日の中、真剣な顔で本を読んでいた。
○○「あの・・・・・・藤目さん?」
私が声をかけると、藤目さんはゆっくりと顔を上げた。
藤目「○○さん」
本の世界から戻ってきたばかりの彼が、私に優しく微笑みかける。
藤目「不思議ですね。今、貴方のことを考えていました」
○○「えっ・・・・・・」
藤目「新しい物語の構想を練っていたんです。その主人公が自然に貴方に似てしまって・・・・・・」
○○「私にですか?」
藤目さんはメモをとっていた紙を広げて、私に見せてくれる。
藤目「素直で優しくて・・・・・・とても魅力的な主人公なんですよ」
神殿への道には、変わらず木漏れ日がきらきらと降り注いでいる。
まばゆいその光景に、私は思わず目を細めた・・・-。