兵士さんと一緒にアースガルズの広大な大地を駆け抜け、ようやくトールくんの姿を見つけた後・・・-。
(嘘・・・・・・あれがヨルムンガンド・・・・・・?)
あまりに巨大なその姿を、呆然と見上げる。
その時だった。
○「・・・・・・! 危ない!」
ヨルムンガンドの巨大な尻尾が、トールくんの背後から襲いかかる。
トール「なっ・・・・・・○○! どうしてここに・・・・・・!」
トールくんが驚いたように私の名前を叫びながら尻尾を避ける。
けれど次の瞬間、ヨルムンガンドの瞳がこちらを捉え・・・・・・
兵士2「ぐあっ!」
○○「あっ・・・・・・!」
ヨルムンガンドの尻尾によって吹き飛ばされた兵士さんが岸壁に体を打ちつけ、
その巨大な尻尾が、今度は私に向かって振り上げられた。
けれど・・・-。
トール「○○!!」
○○「トールくん!?」
ヨルムンガンドの攻撃を、トールくんがミョルニルで受け止める。
けれどすべての衝撃を受け切ることができなかったのか、頬には一筋の血が流れていた。
○○「トールくん・・・・・・!」
トール「・・・・・・アンタは、そこから動くな」
トールくんが、ミョルニルを握る手にさらに力を込める。
すると、彼の体が淡い光に包まれ・・・・・・
トール「俺の兵を負傷させたあげく、○○に手出ししようなんて・・・・・・。 オマエだけは絶対に許さねえぞ、ヨルムンガンド!」
トールくんはミョルニルを振るい、受け止めていた尻尾を弾く。
そして、巨大な体を伝ってヨルムンガンドの頭上へと駆け上がり・・・・・・
トール「くらえぇぇ!!」
振り下ろしたミョルニルはヨルムンガンドに深く突き刺さり、地面へと飛び降りてきたトールくんは、額についた血をぬぐった。
○○「やっ・・・・・・た?」
トール「ああ・・・・・・」
肩で息をするトールくんが、倒れ込むヨルムンガンドを見つめる。
そうして、少しの後・・・・・・
トール「ようやく終わったな・・・・・・」
トールくんはミョルニルの柄を握りしめて嬉しそうにつぶやく。
するとトールくんの気持ちに呼応するように、淡い光が彼の体を優しく包み込んだのだった・・・-。
・・・
・・・・・・
その後、トールくんがヨルムンガンドを倒したという知らせはあっという間に広まり・・・・・・
街中が安堵の空気に包まれる中、私はトールくんに連れられて彼の部屋を訪れていた。
○○「・・・・・・」
(トールくん、怒ってるよね・・・・・・)
勝手についていったあげく怪我をさせてしまったことを謝ろうと、彼の方を向く。
けれど、その時・・・-。
○○「・・・・・・! トール、くん・・・・・・?」
トールくんが私を力強く抱きしめる。
トール「・・・・・・かった」
○○「え?」
トール「アンタが無事でよかった、○○・・・・・・」
(トールくん・・・・・・)
トールくんのかすれる声や小さく震えている腕に、私は言いようのない切なさを覚えた。
トール「・・・・・・もう、離れた方がいいと思ったんだ。俺は、これから先も戦い続けなければいけないから。 だからあの時、アンタの手を振り払って・・・・・・。 ・・・・・・悪かった。アンタに、あんな悲しい顔をさせたかったわけじゃないのに」
○○「謝らないでください。何があってもこの国を守る・・・・・・それがトールくんのお仕事ですから・・・・・・。 それなのに・・・・・・私の方こそ、勝手なことをしてしまってごめんなさい」
トール「ああ・・・・・・俺は、ミョルニルを受け継いだ、この国の王子だ。 その役目から逃げるわけにはいかない。そのつもりもない。 それなら、アンタを巻き込まないうちに離れるべきだと思った。けど・・・・・・。 離れた方が、よっぽど心配だ」
トールくんは切なげな顔をしながら私の頬に手を添える。
その瞳には今までの冷たさはなく、美しく透き通っていて・・・・・・
(そんな顔で見つめられたら・・・・・・)
初めて見る彼の表情に、胸が苦しくて仕方がない。
トール「アンタさ・・・・・・もうずっと、俺の傍にいろよ。 でないと、心配で俺がおかしくなる」
トールくんの甘い声が、二人きりの部屋に響き・・・・・・
頬から伝わる彼の温もりに、私はそっと手を重ねた。
○○「私も、あなたと同じ気持ちです。だから・・・・・・傍にいさせてもらえますか?」
トール「ああ・・・・・・もう二度と、離さねぇよ」
トールくんはそう言って、優しく私の頬を撫でる。
そして・・・・・・
トール「○○・・・・・・」
艶やかな唇が、私の名前を囁く。
その言葉を合図にして、私達はそっと唇を重ねた・・・-。
おわり。