払われた手と……そして胸が鈍く痛む。
トール「……俺は、行く。 俺がヨルムンガンドを倒して来れば、安全に外を歩けるようになる。 そうしたら……アンタはさっさと自分の国へ帰れ」
○○「トールくん……」
(さっきは笑ってくれたのに……)
再び冷たい瞳で私を見据える彼に、心の痛みがどんどんと増していく。
○○「……一人で、行くんですか?」
トール「当然だ。それが俺の使命だからな」
○○「だけどトールくんがたった一人ですべてを背負うなんて、私はそんなの嫌です。 だから…-」
トール「黙れ」
トールくんの今までにないほど冷たい声に、体がびくりと震えてしまう。
トール「アンタのことだ。どうせ自分も連れて行けとか言うんだろう。でもな……。 俺には果たすべき役割がある。そのためには、他の連中が傍にいたら迷惑なんだ。 それはアンタだって例外じゃない……。 いや……アンタだからこそ、迷惑だって言ってんだよ」
○○「トールくん……だけど、それでも私は…-」
トール「いい加減うざいんだよ、どんくさ女! 黙れよ!」
○○「……っ!!」
張り詰めた声が空気を切り裂き、私は息を呑む。
トール「俺を目覚めさせてくれたことには感謝してる。だがそれはそれだ。 ・・・・・・さっさと帰り支度を整えておけ」
トールくんはそう言うなり、踵を返して走り出す。
すると・・・・・・
兵士2「あのトール様が、あんなに声を荒げるなんて・・・・・・」
兵士2「・・・・・・よほど、姫様のことが大切なんですね」
○○「え・・・・・・?」
兵士2「あの方は誰の助けも必要としていない。私達は、それを信じて疑いませんでしたが・・・・・・」
兵士さんはトールくんが走り去っていった方角を、真剣な表情で見つめる。
そして・・・・・・
兵士2「姫様、どうかお願いです。私と一緒にトール様の元へ同行していただけないでしょうか。 私が命に代えてもお守りするとお約束します。ですから、どうかあの方を・・・・・・」
兵士さんが、震える声で懇願する。
そんな彼に、私は・・・・・・
○○「・・・・・・はい。トールくんを、二度と一人にはしません」
強くそう答えた後、私は兵士さんと一緒にトールくんの元へと向かったのだった・・・-。