暖かな日差しが降り注ぐ中、トールくんは今日も訓練を続けている。
トール「・・・・・・アンタ、また来たのか」
(え・・・・・・?)
トールくんがミョルニルを置いてこちらに近づいてくる。
(昨日までは遠くから声をかけてくれるだけだったのに・・・・・・)
たったそれだけのことなのに、不思議と心が弾んでしまう。
○○「ちょうどお昼の時間ですから・・・・・・よかったら食べてください」
トール「アンタ・・・・・・どこまで懲りない女なんだ。もう諦めようとか思わないのか?」
サンドイッチを差し出す私に、トールくんが呆れたような顔をする。
○○「はい。どうしてもトールくんの力になりたくて・・・・・・」
トール「俺が迷惑だって言ってもか?」
○○「それは・・・・・・」
冷たく言い放つトールくんに、私は何も言えなくなってしまう。
○○「・・・・・・私が傍にいるのが嫌だって思うなら、これだけ置いて行きますから。 後で食べてください。お腹いっぱいの方が力が出るはずです」
トールくんの手にサンドイッチを押しつけて、くるりと背を向ける。
その時だった。
トール「・・・・・・待て」
○○「えっ?」
静止する声と共に、手首を掴まれる。
○○「トールくん・・・・・・?」
トール「アンタ、どうしてそこまで俺に構うんだ? 普通、あれだけ言われたら諦めようと思うだろ?」
トールくんの鋭い瞳が、まっすぐに私を見つめていて・・・・・・
そんな彼に、私は胸の内を告げようと静かに口を開く。
○○「・・・・・・一人に、なって欲しくなかったんです」
トール「え・・・・・・?」
○○「ヨルムンガンドがどんなモンスターなのか、私にはわかりません。 それに、私にはモンスターを倒す力だってない・・・・・・。 だけど、それでも・・・・・・トールくん一人にすべてを背負わせてしまうなんて嫌なんです」
トール「・・・・・・!」
トールくんが、今までにないほど大きく目を見開く。
けれど長い沈黙の後、静かに視線を逸らし・・・・・・
トール「・・・・・・アンタは、本当に変な奴だ」
そう告げたトールくんの頬はわずかに赤らんでいて、声もどこか温かかった。
そして・・・・・・
トール「仕方ないな・・・・・・食べてやるよ、アンタの作ったそれ」
○○「本当ですか?」
トール「嘘言ってどうすんだ。ったく・・・・・・根負けした。 どんくさい女だと思ってたのに、案外根性あるじゃないか」
整った表情をわずかに緩め、トールくんがその場に腰を下ろす。
その時だった。
兵士「トール様! たった今、ヨルムンガンドがこちらに近づいているという知らせが・・・・・・!」
トール「なんだと!?」
突然の知らせに、トールくんが声を荒げる。
辺りには、不穏な空気が漂い始めていた・・・-。