第5話 懲りない理由

暖かな日差しが降り注ぐ中、トールくんは今日も訓練を続けている。

トール「・・・・・・アンタ、また来たのか」

(え・・・・・・?)

トールくんがミョルニルを置いてこちらに近づいてくる。

(昨日までは遠くから声をかけてくれるだけだったのに・・・・・・)

たったそれだけのことなのに、不思議と心が弾んでしまう。

○○「ちょうどお昼の時間ですから・・・・・・よかったら食べてください」

トール「アンタ・・・・・・どこまで懲りない女なんだ。もう諦めようとか思わないのか?」

サンドイッチを差し出す私に、トールくんが呆れたような顔をする。

○○「はい。どうしてもトールくんの力になりたくて・・・・・・」

トール「俺が迷惑だって言ってもか?」

○○「それは・・・・・・」

冷たく言い放つトールくんに、私は何も言えなくなってしまう。

○○「・・・・・・私が傍にいるのが嫌だって思うなら、これだけ置いて行きますから。 後で食べてください。お腹いっぱいの方が力が出るはずです」

トールくんの手にサンドイッチを押しつけて、くるりと背を向ける。

その時だった。

トール「・・・・・・待て」

○○「えっ?」

静止する声と共に、手首を掴まれる。

○○「トールくん・・・・・・?」

トール「アンタ、どうしてそこまで俺に構うんだ? 普通、あれだけ言われたら諦めようと思うだろ?」

トールくんの鋭い瞳が、まっすぐに私を見つめていて・・・・・・

そんな彼に、私は胸の内を告げようと静かに口を開く。

○○「・・・・・・一人に、なって欲しくなかったんです」

トール「え・・・・・・?」

○○「ヨルムンガンドがどんなモンスターなのか、私にはわかりません。 それに、私にはモンスターを倒す力だってない・・・・・・。 だけど、それでも・・・・・・トールくん一人にすべてを背負わせてしまうなんて嫌なんです」

トール「・・・・・・!」

トールくんが、今までにないほど大きく目を見開く。

けれど長い沈黙の後、静かに視線を逸らし・・・・・・

トール「・・・・・・アンタは、本当に変な奴だ」

そう告げたトールくんの頬はわずかに赤らんでいて、声もどこか温かかった。

そして・・・・・・

トール「仕方ないな・・・・・・食べてやるよ、アンタの作ったそれ」

○○「本当ですか?」

トール「嘘言ってどうすんだ。ったく・・・・・・根負けした。 どんくさい女だと思ってたのに、案外根性あるじゃないか」

整った表情をわずかに緩め、トールくんがその場に腰を下ろす。

その時だった。

兵士「トール様! たった今、ヨルムンガンドがこちらに近づいているという知らせが・・・・・・!」

トール「なんだと!?」

突然の知らせに、トールくんが声を荒げる。

辺りには、不穏な空気が漂い始めていた・・・-。

 

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