―――――
トルマリ『ぼく、男の子なんだよ』
―――――
その後…-。
トルマリと一緒に城へ向かっていく途中……
徐々に足に痛みを感じていった。
〇〇「……っ!」
思わず足を止めてしまう。
(あ……)
たくさん歩いたせいか、靴擦れを起こしてしまっていた。
トルマリ「どうしたの?」
隣を並んで歩いていたトルマリが、私に目を向ける。
〇〇「ごめん、何でもないよ。行こう」
(トルマリに迷惑かけられない)
痛みをこらえ、歩き出そうとすると…-。
トルマリ「……ぼくにつかまって」
〇〇「え?」
トルマリ「よっ! っと」
〇〇「……! ちょ、ちょっとトルマリ!」
トルマリが突然私を横抱きにし、城への道を進み始めた。
〇〇「わ、私、本当に平気だから!」
(足が痛いってどうしてすぐにわかったのかな)
トルマリは優しく私に微笑みかける。
トルマリ「こういう靴って、かかとが痛くなっちゃうよね」
(そうか……トルマリだから、わかったんだ)
〇〇「ありがとう……」
そう言うとトルマリは、目を細めて優しく笑ってくれた。
その顔を、腕の中からそっと見ていた…-。
私は、トルマリに抱かれたまま城へと到着した。
城の従者さん達が、トルマリの帰還に驚き、喜んで駆け寄って来る。
従者「トルマリ様……ご無事で!」
トルマリは私をその場に下ろすと、そっと支えるように腰に手を回す。
(なんでだろう、トルマリに触られると、胸がどきどきする……)
トルマリ「〇〇が助けてくれたんだ」
執事「何と御礼を申し上げて良いか……」
トルマリ「……」
トルマリは何か思案していたが、やがて明るい声を発した。
トルマリ「ねえ! ぼく、〇〇に、感謝を込めてパーティーを開きたいな!」
〇〇「えっ? パーティー?」
執事「それは良い考えですね。今晩、早速準備いたしますか?」
トルマリ「うん! よろしく!」
〇〇「いいよ、トルマリ。パーティーなんて」
トルマリ「どうして? すごく楽しいよ、きっと! 〇〇とパーティーなんてとっても嬉しい」
(私も嬉しいけど……ドレスもないし……)
突然トルマリが私の顔を覗きこむ。
トルマリ「心配しないで。可愛いドレス、ぼくが〇〇に見立ててあげる♪」
〇〇「え? な、なんで考えてることわかったの?」
トルマリは悪戯っぽく微笑むと、私の手を引き、走り出す。
(トルマリには、全部心を見透かされているみたい)
トルマリは、部屋に着くなり私のドレスを選び始めた。
トルマリ「〇〇は、明るい色のドレスが似合うと思うんだよね」
ドレスに装飾品、そしてメイクまで…―。
トルマリが慣れた手つきで、私をドレスアップさせていく。
鏡の中の私が自分ではないようで、なんだかくすぐったい気持ちになる。
(……素敵なドレス)
〇〇「ありがとう、トルマリ…-」
振り返ると、トルマリがドレスアップした私を眺め、にっこりと微笑んでいる。
〇〇「どうしたの?」
トルマリ「はい、これ」
トルマリが渡してくれたのは、ヒールの低い、私の足にぴったりのサイズの可愛い靴だった。
トルマリ「これだったら、痛くないと思う」
(トルマリ……)
〇〇「ありがとう!」
靴を渡されてトルマリにお礼を言うと、彼はじっと私を見つめてきた。
トルマリ「やっぱりそのドレス、ぼくが着るより似合ってる」
トルマリの視線に、胸が音を立て始める。
(あれ、私……?)
〇〇「そ、そんなことないよ……」
恥ずかしさに、思わず後ろを向いてしまった時…-。
〇〇「……っ!」
ドレスの裾を踏んで、倒れ込んでしまいそうになる。
トルマリ「危ないっ!」
トルマリが、私を後ろから抱き込むように、支えてくれた。
〇〇「……! あ、ありがとう……」
トルマリ「危なっかしいなあ、〇〇は」
トルマリが、笑いながら腕をゆっくりと私から離す。
(どんなにドレスが似合っても、やっぱりトルマリは男の子なんだ)
華奢に見えて、しなやかで力強いトルマリの腕を見つめて、心の奥で、トクンと小さな音がした…-。