トルマリと一緒に城への道を歩いていると、森の小道にさしかかる。
(綺麗なところ……)
トルマリ「綺麗でしょ? ちょっと休憩しようか」
〇〇「うん」
私達は、木陰に並んで腰をおろした。
木々の間を通り過ぎる風が、とても爽やかな香りを運ぶ。
トルマリ「ああ、生き返る。植物っていいよね」
トルマリは大きく深呼吸をして瞳を閉じた。
トルマリ「あのさ……さっきは本当にありがとう」
〇〇「さっき?」
トルマリは、何かをうかがうように私を見つめる。
(……トルマリ?)
トルマリ「ぼくのこの格好が似合うって……」
〇〇「うん。とても似合うよ」
トルマリ「……嬉しい」
トルマリは私の言葉に、微かに頬を染めた。
トルマリ「〇〇って面白いね」
(ただ、思った事を言っただけなんだけどな)
トルマリ「ぼくね、周りから変な目で見られても、これはぼくの個性だと思って、気にしてなかったんだ。 でも、さすがに『気持ち悪い』はちょっと悲しくなっちゃった」
トルマリはふふっと笑い、肩をすくめて見せる。
(あ……)
その仕草に胸が、きゅっと締め付けられる。
(どうしたんだろう……?)
トルマリ「〇〇にだけ、言っちゃおうかな」
〇〇「え?」
トルマリは、まっすぐに私の瞳を覗き込む。
トルマリ「ぼくね、アルマリの事が大好きなんだ」
〇〇「……アルマリ?」
トルマリ「ぼくの双子の弟だよ。 ぼくは長男だから、このままいくとぼくが次の国王になっちゃうんだよね。 でも、アルマリのほうが国王にふさわしいから。 アルマリは、とても頭がよくて、ぼくよりもこの国を守る力を持っているんだ。 それに、アルマリは国王になりたいみたいだし。 だから、ぼくは自分が好きな格好をして、自由気ままに生きるの」
(……だから女の子の恰好を)
トルマリ「そうすれば、みんなもアルマリの方が国王にふさわしいって思うでしょ?」
〇〇「……トルマリ」
不意にトルマリの手が私の頬にそっと触れ、大きな瞳で私を見つめる。
トルマリ「〇〇、そんな顔しないで」
〇〇「……!」
(私、どんな顔してたんだろう)
(でも、なんだか胸が苦しくて……)
〇〇「ごめんね、私…-」
頬に触れるトルマリの手が離れ、今度はその人差し指が私の口に触れて言葉を奪う。
トルマリ「この格好は、ぼくが本当に好きでしてるんだから、大丈夫だよ」
(トルマリ……)
トルマリの表情は私をなだめるように穏やかで、私はどうにかそれに応えて笑おうとする。
(優しい人……)
陽に輝くブロンドが、なぜだかとても切なく映った…-。