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トルマリ『そんなの全然平気だよ! だって、ぼく男の子だもん!』
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トルマリの美しいブロンドが、そよそよと風になびいている。
(トルマリが、男の子……!?)
リボンを選ぶ可愛らしい後ろ姿を見れば見るほど、私の頭は混乱していった。
トルマリ「可愛いのが見つかった♪ そろそろお城へ向かおうか♪」
〇〇「う、うん」
(やっぱり、男の子だなんて信じられない)
(だって……こんなに可愛いのに)
トルマリ「何~? ぼくのことじっと見て」
そう言われて初めて、トルマリを見つめていた自分に気づく。
トルマリは不思議そうに私を見つめ返してくる。
トルマリ「なになに~? 何かついてる?」
〇〇「ううん、何でもないよ! ただ、あんまり可愛いから……」
(だから、まだ信じられなくて)
トルマリは、まるで私の心を見透かすように、優しく微笑みかけてきた。
トルマリ「ありがと。〇〇は優しいね」
(全然気づかなかった……)
その時…-。
???「君達、可愛いね」
私とトルマリに、二人の男が話しかけてきた。
街の男1「おれ達と一緒に遊ばない?」
(なんだか、ちょっと怖い……)
〇〇「トルマリ。あっちに行こ…―」
トルマリ「いいよ! どこに連れてってくれるの?」
にっこりと笑って、トルマリがそう答える。
〇〇「ト、トルマリ!」
街の男2「ノリいい子って好きだな。楽しいとこ行こうよ」
(トルマリ、すっかり乗り気だ……)
トルマリ「楽しそうだし行こうよ! このままお城に戻るのも退屈だなって思ってたんだ♪」
〇〇「やめようよ」
街の男2「何してるの~、早く行こうよ」
トルマリ「今行く~! 〇〇、行こうよ、ね♪」
トルマリは戸惑う私の手を取った。
トルマリ「せっかくだし、楽しもう!」
軽快な足取りで歩き始めたトルマリの後を、仕方なく追った。
(でも、王子様なのに大丈夫かな)
不安に思いながらもしばらく歩いていると、賑やかな音が響く一角に到着する。
(人がいっぱいいる……それに、すごくうるさい)
街の男1「ここ、いい所でしょ♪」
トルマリ「全然ダメだよ。うるさいし、低俗。他の所に連れてって」
にっこりとトルマリが笑うと、男達はだらしなく頬をゆるめる。
(す、すごいトルマリ……)
街の男2「君、さっきから浮かない顔してるね~。笑顔が見たいんだけどな」
男が突然私に顔を近づけ、表情を伺ってきた。
〇〇「いえ、私は……!」
(トルマリごめん、やっぱり私には無理だ……!)
男達と楽しんでいるトルマリの腕に、そっと手をかける。
〇〇「トルマリ、ね、帰ろう?」
トルマリ「え~もうちょっとだけ、ね?」
〇〇「ト、トルマリ……」
トルマリ「せっかくなんだし、もう少し楽しんでからお城に行こうよ」
街の男1「お城? なになに、メルヘンだね。いいね~そんなノリ大好き」
そう言って、男はトルマリに唇を寄せてきた。
(え? トルマリ!)
その瞬間…-。
トルマリは男の顔面にパンチを放って、倒してしまう。
トルマリ「男同士で気持ち悪いだろ!」
街の男2「え……男?」
その言葉に、周囲がざわつき始めた…-。