第2話 ぼく、……だよ

トルマリは、ドレスの皺を整えつつ立ち上がり、大きな瞳で私を見つめた。

トルマリ「そうだ! 〇〇を、お城に招待しようかな」

〇〇「え、私を?」

トルマリ「そうだよ! でも、その前に……」

トルマリは、可愛らしく結ばれたツインテールに手を触れると、私に悪戯っぽい笑顔を向ける。

トルマリ「ここにピンクのリボンとかあったら、もっとかわいいと思わない?」

(とっても似合いそう)

〇〇「うん、かわいい。トルマリならきっと似合うね」

トルマリ「じゃあ決まり! ぼくのリボン、一緒に選んで!」

細い腕に手を引かれ、トルマリと共に街へと向かった。

様々な店が軒を連ねる市街地で、トルマリは目を輝せてリボンを探す。

トルマリ「これはどう?」

トルマリは、ピンクの大きなリボンを手にとって、ブロンドの髪に当ててみる。

〇〇「可愛い。とっても似合ってる」

トルマリ「本当? じゃこれにしようかなーでもなー……」

あれこれとリボンを手に取り悩む姿は、とても無邪気で愛らしい。

(なんだか、友達が出来たみたいでうれしいな)

〇〇「あ……!」

その時、近くを通りがかったおじいさんが、足をもつれさせて倒れてしまった。

トルマリ「大丈夫ですか?」

おじいさんは、足をくじいたようで立てないでいる。

トルマリは、それまで持っていたリボンを全て置いて、真っ先に駆け寄った。

〇〇「どうしよう、誰か呼んでくる」

誰か運んでくれる人をと、駆け出そうとしたその瞬間…-。

トルマリ「待って、ぼくが運ぶから」

〇〇「無理だよ、誰か呼んでくる」

トルマリ「本当に大丈夫だよ」

トルマリは、華奢な腕でおじいさんを支えて立ち上がる。

おじいさんを支えるその腕は、細くてしなやかだけど……

なぜだか少し逞しさを感じて、思わず見入ってしまった。

(なんだか、ちょっと意外)

トルマリ「おじいさん、大丈夫? 家まで送ろうか」

おじいさん「いやいや、大丈夫」

おじいさんは深々と頭をさげた。

おじいさん「本当にありがとう。こんなに可愛らしいお嬢さんの肩を借りてしまって悪かったね」

トルマリは、無邪気な笑顔をおじいさんに向ける。

トルマリ「そんなの全然平気だよ! だって、ぼく男の子だもん!」

〇〇「……え!?」

(トルマリが、男の子!?)

トルマリの大きな瞳が、更に大きくなって私を捉える。

トルマリ「気づいてなかったの?」

〇〇「う、うん……」

(……だって)

私は、ピンクのドレスが似合うトルマリを、ただ見つめることしかできないでいた…-。

 

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