トルマリは、ドレスの皺を整えつつ立ち上がり、大きな瞳で私を見つめた。
トルマリ「そうだ! 〇〇を、お城に招待しようかな」
〇〇「え、私を?」
トルマリ「そうだよ! でも、その前に……」
トルマリは、可愛らしく結ばれたツインテールに手を触れると、私に悪戯っぽい笑顔を向ける。
トルマリ「ここにピンクのリボンとかあったら、もっとかわいいと思わない?」
(とっても似合いそう)
〇〇「うん、かわいい。トルマリならきっと似合うね」
トルマリ「じゃあ決まり! ぼくのリボン、一緒に選んで!」
細い腕に手を引かれ、トルマリと共に街へと向かった。
様々な店が軒を連ねる市街地で、トルマリは目を輝せてリボンを探す。
トルマリ「これはどう?」
トルマリは、ピンクの大きなリボンを手にとって、ブロンドの髪に当ててみる。
〇〇「可愛い。とっても似合ってる」
トルマリ「本当? じゃこれにしようかなーでもなー……」
あれこれとリボンを手に取り悩む姿は、とても無邪気で愛らしい。
(なんだか、友達が出来たみたいでうれしいな)
〇〇「あ……!」
その時、近くを通りがかったおじいさんが、足をもつれさせて倒れてしまった。
トルマリ「大丈夫ですか?」
おじいさんは、足をくじいたようで立てないでいる。
トルマリは、それまで持っていたリボンを全て置いて、真っ先に駆け寄った。
〇〇「どうしよう、誰か呼んでくる」
誰か運んでくれる人をと、駆け出そうとしたその瞬間…-。
トルマリ「待って、ぼくが運ぶから」
〇〇「無理だよ、誰か呼んでくる」
トルマリ「本当に大丈夫だよ」
トルマリは、華奢な腕でおじいさんを支えて立ち上がる。
おじいさんを支えるその腕は、細くてしなやかだけど……
なぜだか少し逞しさを感じて、思わず見入ってしまった。
(なんだか、ちょっと意外)
トルマリ「おじいさん、大丈夫? 家まで送ろうか」
おじいさん「いやいや、大丈夫」
おじいさんは深々と頭をさげた。
おじいさん「本当にありがとう。こんなに可愛らしいお嬢さんの肩を借りてしまって悪かったね」
トルマリは、無邪気な笑顔をおじいさんに向ける。
トルマリ「そんなの全然平気だよ! だって、ぼく男の子だもん!」
〇〇「……え!?」
(トルマリが、男の子!?)
トルマリの大きな瞳が、更に大きくなって私を捉える。
トルマリ「気づいてなかったの?」
〇〇「う、うん……」
(……だって)
私は、ピンクのドレスが似合うトルマリを、ただ見つめることしかできないでいた…-。