アベルディア城での、晩餐会の後…―。
私達はベウルさんの部屋で談笑しながら、楽しい時間を過ごしていた。
ベウル「ごめんね、○○ちゃん。ずっとおれの弟達がべったりで……」
○○「いえ。すごく楽しいです」
ちょうどその時、扉をノックする音が聞こえ、お妃様がやってきた。
皇后「姫、お会いできるのを楽しみにしていました。ベウルを助けてくれて本当にありがとう」
ベウルさんとよく似たお妃様は、あたたかみのある優しい笑顔を私に向けてくれた。
皇后「さあ、子ども達、姫に迷惑がかかりますから、そろそろ自分の部屋に……」
ベウルの妹「やだ、もっとお姫様と一緒にいるもん!」
皇后「まあ、そのようなわがままを……」
ベウル「困ったな……」
そう言いながらも、小さな妹を抱き上げるベウルさんの目はとても優しい。
(ベウルさん……妹さん達が、大好きなんだな)
ベウルさんのご家族の様子を見て、私の心にも暖かな灯がともった気がした…―。
……
それから数日…―。
冬ごもりの準備も終わり、私もアベルディアを発つ日がやって来た。
(皆と別れるの、寂しいな……それに……)
ー----
ベウル「そんなかわいい笑顔を浮かべて、そんなかわいいこと言われると……どうしたらいいか、わかんなくなるよ」
ー----
(ベウルさんと……本当はもっと一緒にいたい)
彼と一緒に過ごす時間は、優しさと暖かさに包まれていて……私はいつしか、ベウルさんの隣に居ることに、居心地の良さを感じるようになっていた。
その時…―。
ベウルの妹「お姫様、帰らないで!」
扉が勢いよく開いて、ベウルさんの弟さん達が部屋に飛び込んできた。
ベウルの弟「ねえねえ、お姫様も一緒に冬眠しようよ!」
○○「皆……」
しがみついてくる子ども達の頭を苦笑しながら撫でていると、遅れてベウルさんが姿を現した。
ベウル「おまえ達、お姫様を困らせたらダメだって言っただろう?」
ベウルの妹「はーい……お姫様、また遊びに来てね……」
○○「うん、ありがとう。約束するね」
弟さん達はベウルさんにたしなめられて、しょんぼりとして部屋を出ていった。
ベウル「……まったく、すっかり懐いちゃって」
○○「嬉しいです」
ベウルさんは困ったように頭を掻いていたけれど……
ベウル「……でも実は、おれももっと○○ちゃんと、一緒に過ごしたかったんだ」
その言葉に驚いて顔を上げると、ベウルさんは真剣な顔つきで私を見下ろしていた。
○○「嬉しいです……」
ベウル「それほんとに?」
○○「はい……」
ベウル「じゃあさ……次の約束をさせてくれる?」
少し頬を赤らめながら、ベウルさんは私の両手を握った。
ベウル「春になったら、また会いに来て欲しい」
○○「はい、きっと」
木枯らしが、窓を揺らす…―。
けれど、ベウルさんに包まれた手は、とても暖かかった…―。