獣人の国・アベルディア…―。
目覚めさせたベウル王子の招待を受けてやってきたこの国は、山々の緑や、楽しげな鳥のさえずり、降り注ぐ暖かな日差しと、全てが伸び伸びとして心地良い。
(初めて訪れるのに、なぜだか懐かしい感じ……小さいけれど、素敵な国だな)
そんなふうに思いつつ、町の中心部を目指していると、道の向こうから見知った人物が姿を現した。
大きく手を振って、嬉しそうに駆け寄ってくる彼は…―。
ベウル「○○ちゃん、いらっしゃい!」
○○「ベウルさん、こんにちは」
背の高いベウルさんは、私の前に身を屈めると、少し照れくさそうに笑みを浮かべた。
○○「迎えに来てくれたんですか?」
ベウル「うん。すれ違いにならなくてよかったよ。せっかくだから、このまま町の中を案内するね」
そのまま二人で歩いて行くと、買い物客で賑わう市場が見えてきた。
○○「すごい人ですね……」
ベウル「騒がしい時期に呼んじゃって、ごめんね」
○○「いえ、活気があっていいなって思います。でも、騒がしい時期って……?」
ベウル「アベルディアには、四季があるんだよ。おれ達……アベルディアの民は、冬の間、地下壕にこもって冬眠するんだ。だからこの時期の市場はいつも、冬眠用の食料を買い求める人で、ごった返すんだよ」
○○「冬眠……そんなに寒くなるんですか?」
ベウル「うん。しかもおれ達の種族って、寒さにすごく弱いんだ」
○○「そうだったんですね」
ベウル「冬眠があるから、冬になる前に○○ちゃんに会いたくて……来てくれて嬉しい。ありがとう」
本当に嬉しそうな表情で言う彼に、私も笑顔になる。
そうして私達は、微笑みを交わしあいながら、賑わう市場の中へと入っていった…―。