アケディアくんに手を引かれるまま、ついて行った先は・・・-。
○○「動物園?」
木々が鬱蒼と茂る園内は、動物園というよりも森の中のようだった。
アケディア「そ、ここなら二人で楽しめるし。それに、見てみたい動物がいるんだ・・・・・・あっ、いた!」
アケディアくんが指さした先には、茶色い動物がいる。
目を凝らして見てみると・・・-。
○○「ナマケモノ?」
囲いの中で、ナマケモノが木にだらりとぶら下がりながら眠っている。
アケディア「ぼく、ずっと彼らに憧れていたんだ」
○○「えっ、ナマケモノに!?」
アケディア「だって一日の睡眠時間20時間だよ? こうなれたらいいなって、ずっと思ってたんだ」
アケディアくんは、うっとりとした瞳でナマケモノを見つめる。
しかし突然何かを思いついたのか、真剣な表情になった。
アケディア「でも、○○ちゃんに会って・・・・・・ぼくはちょっと変わったんだ」
○○「えっ・・・・・・」
アケディア「面倒なことも、面白いのかもって思うようになったし」
アケディア「○○ちゃんにカッコいいって思われたくて、頑張ろうと思うようになった」
○○「アケディアくん・・・・・・」
アケディア「そんな不純な動機で会議に出たけど・・・・・・実はちょっと楽しかったんだ。 皆と顔を合わせてその場で意見もらったり、どんな気持ちで考えてるのかってわかって・・・・・・。 会議で話し合うのって・・・・・・大事なんだね」
生き生きとしたその表情には、以前のような気だるさは残っていない。
アケディア「なんか、ぼくじゃないみたい・・・・・・」
(アケディアくんが、すごく凛々しく見える・・・・・・)
アケディア「でも、今の気持ちを○○ちゃんに知ってもらいたくって」
アケディアくんは恥ずかしそうに微笑むと、視線をナマケモノの方へと戻した。
アケディア「まあ、でもやっぱり・・・・・・彼らを・・・・・・うらやましいって・・・・・・思うけど」
アケディアくんの声は途切れ途切れになり、足元がふらふらとしておぼつかない。
○○「・・・・・・アケディアくん、どうしたの?」
アケディア「いつもより動いているから・・・・・・疲れちゃった・・・・・・みたい」
アケディアくんは、私の肩に寄りかかってくる。
○○「ちょっ・・・・・・アケディアくん」
アケディア「うーん・・・・・・立てない」
(お、重い・・・・・・)
肩にかかり重みはどんどん増していき、ついには抱えきれなくなってしまいそうになり・・・-。
○○「もう少し頑張って、アケディアくん!」
アケディア「うん・・・・・・むり・・・・・・」
○○「・・・・・・アケディアくん!!」
私は、アケディアくんが完全に眠りに落ちてしまう前に城へと急いだ・・・。
・・・
・・・・・・
倒れそうなアケディアくんを支えながら、私は城へと帰ってきた。
(無事に帰ってこられてよかった・・・・・・)
アケディア「ZZZZZ・・・・・・」
部屋に着くなり、アケディアくんはベッドの上で深い寝息を立て始める。
(無邪気な寝顔・・・・・・)
アケディアくんの幸せそうな寝顔を見ていると、私のまぶたも重くなり・・・-。
・・・
・・・・・・
まぶたに光を感じる。
アケディア「おはよう、○○ちゃん」
○○「・・・・・・!」
(そうだ、私・・・・・・あのまま・・・・・・)
私は、アケディアくんの寝顔を見ながら一緒に寝てしまっていたようだった。
アケディアくんは、まじまじと私の顔を見つめてくる。
○○「ア、アケディアくん?」
アケディア「早起きってしてみるものだね」
○○「えっ・・・・・・」
アケディア「だって、きみの寝顔が見れたから」
○○「・・・・・・!」
(寝顔って・・・・・・)
途端に恥ずかしくなり、私は両手で顔を覆う。
しかし、その手はアケディアくんに掴まれてしまった。
アケディア「隠さないで。すごく可愛いから」
掴まれた手はとても優しいけれど、私はそれを振り払えずにいる。
(そろそろ起きないと・・・・・・)
(でも・・・・・・)
私とアケディアくんは、見つめ合ったまま動けずにいる。
アケディア「もう少しこうしていたいけど・・・・・・今日も会議があるみたい」
○○「そっか・・・・・・起きないとね」
(本当はもう少しこうしていたいなんて・・・・・・言えないよね)
私が、ベッドの傍から離れようとすると・・・-。
アケディア「いや・・・・・・やっぱり、あともう少し大丈夫かな?」
○○「でも、時間が・・・・・・」
アケディアくんは悪戯っぽく微笑むと、私に手を差し出す。
アケディア「もうちょっとだけ、ね」
彼の手にそっと触れると、ベッドの中へと強引に引き込まれる。
(もう少しだけ、このまま・・・・・・)
私は、彼に誘われた世界で、もう少しだけこの時を楽しむことにする。
柔らかなシーツの包まれながら、少しでもこの時間が長く続くことを祈った・・・-。
おわり。