アケディア「面倒くさいからやめなよ。それに、植え替えたからって蕾が開くとは限らないし」
○○「でも・・・・・・。 私・・・・・・行ってくるね」
それから、数日が経ち・・・-。
(よかった、元気に咲いている)
植え替えた蕾は綺麗に花開き、新たな蕾も芽吹いていた。
(もっともっと元気になってね)
鮮やかな黄色の花に、願いを込めながら水をやっていると・・・-。
アケディア「○○ちゃん、何してるの?」
アケディアくんが、部屋の窓から顔だけを覗かせていた。
○○「アケディアくん、植え替えた花が元気に咲いたよ」
アケディア「えっ、本当に?」
○○「大きな花で、綺麗だよ」
アケディア「へえ・・・・・・」
アケディアくんは、窓から身を乗り出して花を見ようとしている。
(アケディアくん、花が見たいのかな?)
○○「アケディアくん、ここに見に来ない?」
アケディア「・・・・・・」
アケディアくんは黙ってしまい、部屋の中に顔を引っ込めてしまった。
(外に出るのは、やっぱり面倒くさいのかな?)
(でも、アケディアくんにも花を見てもらいたかったな・・・・・・)
残念に思いながらも、花を眺めていると・・・-。
アケディア「・・・・・・うーん、やっぱりだるいな」
アケディアくんが、けだるそうな足取りで花壇へとやってきた。
○○「アケディアくん!」
つい嬉しくなり、私は大きな声を出してしまった。
アケディア「○○ちゃん、ぼくが来てそんなに嬉しいの?」
アケディアくんはあくびを一つすると、涙の溢れた目をこすった。
(やっぱり少しだるそう・・・・・・)
アケディア「あっ、この花? 本当だ、綺麗」
アケディアくんは花壇に植え替えた花を興味深げに見ている。
○○「花も綺麗だけど、ここも。もう一つ蕾ができているの・・・・・・」
夢中になって話していると、アケディアくんがまじまじと私の顔を見つめる。
真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうになり、私は束の間息をするのも忘れてしまった。
アケディア「○○ちゃんって、表情がくるくる変わる・・・・・・面白い」
○○「お、面白い?」
アケディア「悲しんだり、喜んだり、怒ったり・・・・・・すごいなぁ。 ぼくはそうやって感じることすら面倒に思っちゃうから」
○○「えっ・・・・・・!?」
驚いて目を見開くと、アケディアくんが声を出して笑った。
アケディア「ははは、そんなに驚いちゃう?」
しばらく楽しそうに笑った後・・・・・・
アケディア「・・・・・・あれっ? ぼく、いま声を出して笑った?」
アケディアくんは、驚いたように自分の口に手を当てた。
アケディア「・・・・・・声を出して笑ったのなんて初めてかも」
○○「・・・・・・初めて!?」
アケディア「だって、頬は揺れるしお腹にも力が入るし・・・・・・笑うって、一番体力使うことだと思うんだ。 面倒でも気持ちいいことあるんだね・・・・・・」
アケディアくんはそう言うと、もう一度声を出して笑った。
(嬉しい・・・・・・)
アケディアくんの笑い声を聞いていると、私まで嬉しくなってしまう。
けれど・・・・・・
アケディア「・・・・・・寒っ」
冷たい木枯らしが吹きつけ、アケディアくんはすぐに笑うのをやめてしまった。
(陽が傾き始めた・・・・・・)
薄着のまま部屋から出てきたアケディアくんは、寒そうに肩をすぼめている。
○○「部屋に戻ろう」
急いで部屋へ戻ろうとすると・・・-。
○○「・・・・・・!」
アケディアくんは私を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
○○「ア、アケディアくん?」
アケディア「うん、これであったかい」
頬を私の顔にすり寄せ、手のひらで背中をさすってくれる。
(ドキドキする・・・・・・それに)
(なんだか、くすぐったい・・・・・・)
心地よさそうに私で暖を取る彼を見ていると、心の奥までも、温かくなっていくような気がした・・・-。