第3話 ベッドの上においでよ

面倒くさいことを極度に嫌っているアケディアくんは、話をすることも億劫なようで・・・-。

アケディア「いっぱい話したから、口が疲れちゃった・・・・・・」

アケディアくんはため息を吐くと、口をつぐんでしまった。

(喋ってる途中で口が疲れるって・・・・・・)

聞いたこともない事態に驚いて、私はまばたきを繰り返す。

(じゃあ、送られてきたあの手紙って・・・・・・)

ふと、アケディアくんからもらった手紙を思い出す。

書かれていた字はぐにゃぐにゃと曲がり、読むことが難しかった。

(もしかして、途中で書くのが面倒くさくなったのかな?)

○○「アケディアくんがくれた手紙って・・・・・・」

アケディア「あれ、きちんと読めた? なんだか書いていて手が疲れてきちゃってさ」

(やっぱり・・・・・・)

アケディア「でも、書いてある意味はわかったでしょ?」

力の抜けたその笑顔に、私もつられて笑ってしまう。

アケディア「そうだ! 疲れたし、甘いものとか食べたいよね? 今、持ってこさせるよ」

(持ってこさせる?)

アケディアくんは、ベッドの横に置かれているベルを一つ鳴らす。

すると、お菓子をもったメイドさんが、すぐさま部屋へとやってきた。

メイド「アケディア様、本日のケーキはタルトでございます」

アケディア「うん、ありがとう。そこに」

メイドさんは慣れたようにケーキを置くと、すぐに部屋を立ち去って行った。

アケディア「このベルを鳴らせば、大抵のことは済んじゃうよ。 あっ、テレビ見る? ベッドの上でごろごろ見るのは楽しいよ。 ○○ちゃんも、一緒にごろごろしようよ」

アケディアくんはふわふわのベッドを叩いて、私を傍にくるように呼んだ。

○○「すごく楽しそうだけど・・・・・・遠慮するね」

アケディア「えー、つまんないなぁ~」

(でも、アケディアくんの気持ちもわかるような気も・・・・・・)

締め切られた室内は温度もちょうどよく、その心地良さに思わず気が緩みそうになる。

(このままではだめ・・・・・・少し外の空気を吸わなきゃ・・・・・・)

○○「アケディアくん、窓を開けてもいいかな?」

アケディア「うん、いいよ」

窓際には、小さな植木鉢が置かれていた。

けれど、花はすでに枯れていて、土の上に寂しげに葉が散っている。

その葉を拾い上げようとすると・・・・・・

(あっ・・・・・・この花、まだ生きてる)

枯れてしまった花の陰に隠れ、小さな蕾が芽吹いていた。

○○「アケディアくん、この花・・・・・・」

アケディア「ああ、枯れちゃってるね。 すぐにメイドに片づけさせよう」

私は、呼び鈴を鳴らそうとするアケディアくんの手をとっさに止める。

○○「でも・・・・・・まだ蕾が残ってるよ」

アケディア「蕾? あっ、本当だ」

窓の外を見ると、色とりどりの花々が植えられている花壇があった。

○○「私、この花を花壇に植え替えてくるね」

アケディア「えっ・・・・・・なんでそんな面倒なことを!?」

○○「植え替えた方が、花は生き生きするし」

アケディア「でも、そんなことだけのために、わざわざ外にまで行くの?」

アケディアくんは、私の顔を不思議そうに見つめる。

アケディア「面倒くさいからやめなよ。それに、植え替えたからって蕾が開くとは限らないし」

○○「でも・・・・・・」

(こんなに可愛い蕾だし・・・・・・やっぱり、捨てるなんてできない)

○○「私・・・・・・行ってくるね」

アケディアくんの言葉を振り切って、私は一人で花壇へと向かった・・・-。

 

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