面倒くさいことを極度に嫌っているアケディアくんは、話をすることも億劫なようで・・・-。
アケディア「いっぱい話したから、口が疲れちゃった・・・・・・」
アケディアくんはため息を吐くと、口をつぐんでしまった。
(喋ってる途中で口が疲れるって・・・・・・)
聞いたこともない事態に驚いて、私はまばたきを繰り返す。
(じゃあ、送られてきたあの手紙って・・・・・・)
ふと、アケディアくんからもらった手紙を思い出す。
書かれていた字はぐにゃぐにゃと曲がり、読むことが難しかった。
(もしかして、途中で書くのが面倒くさくなったのかな?)
○○「アケディアくんがくれた手紙って・・・・・・」
アケディア「あれ、きちんと読めた? なんだか書いていて手が疲れてきちゃってさ」
(やっぱり・・・・・・)
アケディア「でも、書いてある意味はわかったでしょ?」
力の抜けたその笑顔に、私もつられて笑ってしまう。
アケディア「そうだ! 疲れたし、甘いものとか食べたいよね? 今、持ってこさせるよ」
(持ってこさせる?)
アケディアくんは、ベッドの横に置かれているベルを一つ鳴らす。
すると、お菓子をもったメイドさんが、すぐさま部屋へとやってきた。
メイド「アケディア様、本日のケーキはタルトでございます」
アケディア「うん、ありがとう。そこに」
メイドさんは慣れたようにケーキを置くと、すぐに部屋を立ち去って行った。
アケディア「このベルを鳴らせば、大抵のことは済んじゃうよ。 あっ、テレビ見る? ベッドの上でごろごろ見るのは楽しいよ。 ○○ちゃんも、一緒にごろごろしようよ」
アケディアくんはふわふわのベッドを叩いて、私を傍にくるように呼んだ。
○○「すごく楽しそうだけど・・・・・・遠慮するね」
アケディア「えー、つまんないなぁ~」
(でも、アケディアくんの気持ちもわかるような気も・・・・・・)
締め切られた室内は温度もちょうどよく、その心地良さに思わず気が緩みそうになる。
(このままではだめ・・・・・・少し外の空気を吸わなきゃ・・・・・・)
○○「アケディアくん、窓を開けてもいいかな?」
アケディア「うん、いいよ」
窓際には、小さな植木鉢が置かれていた。
けれど、花はすでに枯れていて、土の上に寂しげに葉が散っている。
その葉を拾い上げようとすると・・・・・・
(あっ・・・・・・この花、まだ生きてる)
枯れてしまった花の陰に隠れ、小さな蕾が芽吹いていた。
○○「アケディアくん、この花・・・・・・」
アケディア「ああ、枯れちゃってるね。 すぐにメイドに片づけさせよう」
私は、呼び鈴を鳴らそうとするアケディアくんの手をとっさに止める。
○○「でも・・・・・・まだ蕾が残ってるよ」
アケディア「蕾? あっ、本当だ」
窓の外を見ると、色とりどりの花々が植えられている花壇があった。
○○「私、この花を花壇に植え替えてくるね」
アケディア「えっ・・・・・・なんでそんな面倒なことを!?」
○○「植え替えた方が、花は生き生きするし」
アケディア「でも、そんなことだけのために、わざわざ外にまで行くの?」
アケディアくんは、私の顔を不思議そうに見つめる。
アケディア「面倒くさいからやめなよ。それに、植え替えたからって蕾が開くとは限らないし」
○○「でも・・・・・・」
(こんなに可愛い蕾だし・・・・・・やっぱり、捨てるなんてできない)
○○「私・・・・・・行ってくるね」
アケディアくんの言葉を振り切って、私は一人で花壇へと向かった・・・-。