従者「アケディア様、アケディア様!」
従者さんが体をいくら揺すっても、アケディアくんは目を覚まさない。
従者「……申し訳ございません、一度寝てしまうと駄目ですな」
従者さんはため息を吐くと、アケディアくんを部屋の中へと運ぼうとする。
けれど、ぐっすりと眠りこんでいるアケディアくんは、すごく重いようで……
〇〇「あの……私も手伝います!」
従者「トロイメアの姫様に、そのようなことは……」
〇〇「大丈夫です、二人で運んだ方が早いですよ」
従者「……申し訳ありません」
アケディアくんの体を支えて、部屋の中へ入って行く。
部屋の中を見るや否や、私は驚いて言葉に詰まった。
(こんな部屋、初めて……)
部屋の中にある、あらゆるものがベッドから手の届く範囲に置かれていて、
まさに、ベッドの上だけで生活をできるような状態になっていた。
(とても、便利そう……だけど)
ベッドの周りにはいろんなものが散乱してしまっている。
私は落ちていた目覚まし時計を拾い上げ、戸棚の上に置いた。
○○「……とても生活がしやすそうな部屋ですね」
従者「はい。実際にアケディア様は、一日の大半……いえ、全てをこのベッドの上で過ごされています」
○○「えっ……! では、公務はどうされているんですか?」
従者「我々は、ベッドから王子に指示を出していただいております」
○○「そうなんですか……」
メイド「いけない、そろそろ会議のお時間です……」
従者「申し訳ありません、○○様。失礼致します」
私に一礼してから、従者さんは部屋を出て行った。
(アケディアくんが目を覚ますまで、少し待ってみよう……)
しばらくの間、アケディアくんの寝顔を見つめていると…ー。
アケディア「……」
○○「……!」
ぐっすりと眠っていたアケディアくんが、突然目を見開いた。
アケディア「ふーっ、寝たふりも・・・・・・疲れる」
(ね、寝たふり!?)
○○「・・・・・・今までの、寝たふりだったの?」
アケディア「うん、ぼく演技上手いでしょ?」
その言葉を聞いて、呆気に取られてしまう。
○○「でも、なんで寝たふりなんてしていたの?」
アケディア「皆は○○ちゃんが遊びに来てくれるなら、きちんとしなさいって言うけど・・・・・・。 きみには、いつも通りのぼくを知って欲しかったんだ。 いつもの、ベッドの上でだらだらするぼくをね」
○○「だから会議にも・・・・・・」
アケディア「うん、面倒だから出ないよ」
アケディアくんは、悪びれることもなくはっきりと言い切った。
アケディア「代々の王は面倒くさがりやで、自然と優秀な部下が揃うようになってるし・・・・・・。 放っておいても勝手に決めてくれてるしね。 最終的な決定はぼくがここで下してるし、それでいい。 ああ・・・・・・会議って言葉を聞くだけでも面倒だ・・・・・・」
アケディアくんはぽつりとつぶやくと、大きなあくびを一つした。
(面倒くさがりの王子様・・・・・・)
私は、アケディアくんの過ごし方に、ただただ驚きを隠せずにいた・・・-。