その後…-。
帰る支度もままならず、私は神殿へと足を運んでいた。
祭壇内には誰もおらず、ヒビが入ったままの水鏡がひっそりとたたずんでいる。
(やっぱり、直らなかったんだ……)
薄い日差しがたゆたう水面に、私はしばらく目を奪われていた。
??「〇〇様……」
声が聞こえ、後ろをハッと振り返る。
入り口を見ると、ユーノさんがじっと私を見つめていた。
〇〇「ユーノさん……おはようございます」
ユーノ「申し訳ございませんが、婚宴の儀は中止となりました。 お引き取り願えますか」
ユーノさんは私と目を合わせないまま、踵を返す。
〇〇「あの……!」
思わず大きな声を出してしまうと、ユーノさんの足が止まった。
〇〇「私、何かユーノさんに失礼なことをしましたか?」
ユーノ「……いえ」
〇〇「だったらどうして……」
ユーノ「……申し訳ございません。失礼いたします」
静寂に溶け込むユーノさんの声に拒絶を感じて、胸が苦しくなる。
〇〇「ユーノさんが悩んだり困ったりしているなら、少しでも力になりたいんです。 待っています。お話を、させてください……」
ユーノ「……」
けれど、ユーノさんの足音はだんだんと遠ざかっていって…-。
私はその場から動けず、小さくなる彼の背中を見つめていた…-。