太陽5話 誰もいない祭壇

その後…-。

帰る支度もままならず、私は神殿へと足を運んでいた。

祭壇内には誰もおらず、ヒビが入ったままの水鏡がひっそりとたたずんでいる。

(やっぱり、直らなかったんだ……)

薄い日差しがたゆたう水面に、私はしばらく目を奪われていた。

??「〇〇様……」

声が聞こえ、後ろをハッと振り返る。

入り口を見ると、ユーノさんがじっと私を見つめていた。

〇〇「ユーノさん……おはようございます」

ユーノ「申し訳ございませんが、婚宴の儀は中止となりました。 お引き取り願えますか」

ユーノさんは私と目を合わせないまま、踵を返す。

〇〇「あの……!」

思わず大きな声を出してしまうと、ユーノさんの足が止まった。

〇〇「私、何かユーノさんに失礼なことをしましたか?」

ユーノ「……いえ」

〇〇「だったらどうして……」

ユーノ「……申し訳ございません。失礼いたします」

静寂に溶け込むユーノさんの声に拒絶を感じて、胸が苦しくなる。

〇〇「ユーノさんが悩んだり困ったりしているなら、少しでも力になりたいんです。 待っています。お話を、させてください……」

ユーノ「……」

けれど、ユーノさんの足音はだんだんと遠ざかっていって…-。

私はその場から動けず、小さくなる彼の背中を見つめていた…-。

 

<<第4話||太陽最終話>>