第2話 運命の人

窓越しの陽光を受けて、鮮やかなステンドグラスが神殿を彩る。

優しさに満ちた空間に、シュテルさんと二人たたずんでいると……

シュテル「……君のその姿は?」

不意に、シュテルさんが私のドレスに目を留めた。

〇〇「あ……これは、儀式に参列するための衣装なんです」

ウェディングドレス姿の私を見て、シュテルさんがまぶしげに目を細める。

シュテル「綺麗だ」

(えっ……)

シュテルさんに褒められた途端、頬にじわりと熱が集まる。

〇〇「……ありがとうございます」

なんだか気恥ずかしくなってしまい、照れ隠しに話題を変えた。

〇〇「とても静かで、心が落ち着く場所ですね」

シュテル「ああ……そうだな」

神殿の長椅子に腰かけながら、鮮やかなステンドグラスを見上げる。

美しい装飾が施された神殿は、身も心も清められそうなほど、神聖な雰囲気に満ちていた。

〇〇「こんな素敵な場所で行われる婚宴の儀って、どんな雰囲気なんでしょうね」

ふと、ここへ来るきっかけとなった疑問を口にする。

(きっと、とても大切な儀式なんだろうな)

神殿の厳かな空気に身を浸していると、不意にシュテルさんが口を開いた。

シュテル「儀式の内容に詳しくないが……。 水鏡を二人で覗き込んだ時、運命の相手なら顔が映ると聞いた」

〇〇「水鏡を? あの祭壇にあるものがそうでしょうか……?」

(それに、運命の相手が映るって……)

シュテルさんの話に驚きながらも、私は祭壇に祀られている水鏡に視線を向ける。

シュテル「……君も見てみたいのか?」

〇〇「運命の相手が誰なのか、知りたいとは思いますけど……」

(今はまだ、心の準備ができていない……)

シュテル「それなら……あの水鏡を見れば、運命の相手がわかる」

突然、シュテルさんが私の手を取って立ち上がった。

シュテル「おいで」

〇〇「えっ、シュテルさん……?」

シュテルさんに導かれるまま、二人で水鏡の前に立つ。

シュテル「僕を相手に、どんなものか試してみるといい」

〇〇「シュテルさんを? それに、試すって……」

戸惑う私の手を握り、シュテルさんは落ち着いて言葉を紡ぐ。

シュテル「心配いらない……僕が傍にいる。 君の願いを叶えたいんだ」

そう告げたシュテルさんの真摯な瞳に、抗うことができなくて……

(どうしよう、いきなりこんな……)

心の準備も整わぬまま、私はシュテルさんと一緒に水鏡を覗き込む…-。

(あれ……?)

けれど、なぜか水鏡の水面はゆらゆらとさざめくだけで、シュテルさんの顔はおろか、自分の顔も映らなかった。

シュテル「……」

(これは、どういうこと……?)

その時……

神官「申し訳ございません……!」

神殿の扉が開き、神官様がこちらへ駆け寄って来た。

神官「儀式を前に、水鏡が壊れてしまいまして……。 現在、修復方法を探しているところなのです」

(そうだったんだ……)

水鏡が壊れていたと聞いて、どこかほっとしている自分に気づく。

シュテル「……」

(シュテルさん?)

ふと隣を見ると……

シュテルさんは、壊れた水鏡を確かめるように見つめ、静かに目を伏せていた…-。

 

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