窓越しの陽光を受けて、鮮やかなステンドグラスが神殿を彩る。
優しさに満ちた空間に、シュテルさんと二人たたずんでいると……
シュテル「……君のその姿は?」
不意に、シュテルさんが私のドレスに目を留めた。
〇〇「あ……これは、儀式に参列するための衣装なんです」
ウェディングドレス姿の私を見て、シュテルさんがまぶしげに目を細める。
シュテル「綺麗だ」
(えっ……)
シュテルさんに褒められた途端、頬にじわりと熱が集まる。
〇〇「……ありがとうございます」
なんだか気恥ずかしくなってしまい、照れ隠しに話題を変えた。
〇〇「とても静かで、心が落ち着く場所ですね」
シュテル「ああ……そうだな」
神殿の長椅子に腰かけながら、鮮やかなステンドグラスを見上げる。
美しい装飾が施された神殿は、身も心も清められそうなほど、神聖な雰囲気に満ちていた。
〇〇「こんな素敵な場所で行われる婚宴の儀って、どんな雰囲気なんでしょうね」
ふと、ここへ来るきっかけとなった疑問を口にする。
(きっと、とても大切な儀式なんだろうな)
神殿の厳かな空気に身を浸していると、不意にシュテルさんが口を開いた。
シュテル「儀式の内容に詳しくないが……。 水鏡を二人で覗き込んだ時、運命の相手なら顔が映ると聞いた」
〇〇「水鏡を? あの祭壇にあるものがそうでしょうか……?」
(それに、運命の相手が映るって……)
シュテルさんの話に驚きながらも、私は祭壇に祀られている水鏡に視線を向ける。
シュテル「……君も見てみたいのか?」
〇〇「運命の相手が誰なのか、知りたいとは思いますけど……」
(今はまだ、心の準備ができていない……)
シュテル「それなら……あの水鏡を見れば、運命の相手がわかる」
突然、シュテルさんが私の手を取って立ち上がった。
シュテル「おいで」
〇〇「えっ、シュテルさん……?」
シュテルさんに導かれるまま、二人で水鏡の前に立つ。
シュテル「僕を相手に、どんなものか試してみるといい」
〇〇「シュテルさんを? それに、試すって……」
戸惑う私の手を握り、シュテルさんは落ち着いて言葉を紡ぐ。
シュテル「心配いらない……僕が傍にいる。 君の願いを叶えたいんだ」
そう告げたシュテルさんの真摯な瞳に、抗うことができなくて……
(どうしよう、いきなりこんな……)
心の準備も整わぬまま、私はシュテルさんと一緒に水鏡を覗き込む…-。
(あれ……?)
けれど、なぜか水鏡の水面はゆらゆらとさざめくだけで、シュテルさんの顔はおろか、自分の顔も映らなかった。
シュテル「……」
(これは、どういうこと……?)
その時……
神官「申し訳ございません……!」
神殿の扉が開き、神官様がこちらへ駆け寄って来た。
神官「儀式を前に、水鏡が壊れてしまいまして……。 現在、修復方法を探しているところなのです」
(そうだったんだ……)
水鏡が壊れていたと聞いて、どこかほっとしている自分に気づく。
シュテル「……」
(シュテルさん?)
ふと隣を見ると……
シュテルさんは、壊れた水鏡を確かめるように見つめ、静かに目を伏せていた…-。