泡沫の国・アフロス 蒼の月…-。
この時期、世界中の王族達がこのアフロスの地に招かれる。
古から伝わる婚宴の儀により、神々からの祝福を受けるためと聞いていた。
トロイメアの姫として、儀式に参列することになった私は…-。
(婚宴の儀って、どんなものなんだろう?)
儀式を数日後に控え、私は祭場となる神殿を訪れていた。
(緊張するけど……少し中を見ておきたい)
この国の儀式において、礼装となるウェディングドレスに身を包んだ私は、神殿の扉の前に立ち、ゆっくりと真輪の取っ手を引いた……
…
……
(え……?)
一瞬……静謐な空間の中に、星々を散りばめたような優しい光が降り注ぐ。
やがて目が慣れると、ステンドグラスから差し込む光の中に、一人たたずむ後ろ姿を見つけた。
(あの人は……)
気配を感じたのか、ゆっくりと振り返ったその人は…-。
シュテル「……」
(シュテルさん……!)
流星の国・メテオベールのシュテル王子だった。
シュテル「〇〇……」
私に気づいたシュテルさんの唇が、微かな笑みを刻む。
星屑のように儚げな光を帯びて、静かに瞬く青色の瞳に引きつけられた。
〇〇「お久しぶりです。シュテルさんも儀式に参列されるのですね」
けれど…-。
シュテル「いや……」
シュテルさんの透き通った青色の瞳が、どこか儚げにゆらめく。
シュテル「この地から、願いの声が聞こえた」
(それじゃ、シュテルさんは誰かの願いをかなえるために、ここへ……?)
シュテルさんの腰元で、星屑時計が淡い光を放っている。
長寿であるメテオベールの王族は、不思議な力を持っている。
それは、自分の永い命をわずかに削ることで、人の願いを叶えるというもの…―。
(けれど、シュテルさんは体が弱いから……)
切ない思いで彼を見つめていると、彼は優しく目を細めた。
シュテル「だが……また君に会えて、嬉しく思う」
(シュテルさん……)
シュテルさんの飾らない言葉が、私の胸に温かく響いた…-。